株式会社COTSUBU

CHAPTER 07

業務改善の優先順位の付け方(効果×難易度)

この章で分かること

  • ムダの大きい順に手を付けてはいけない理由と、代わりに使う2軸の採点表
  • 効果と難易度をそれぞれ4項目で点数にする方法(感覚で決めないための型)
  • 最初の1本に課す3つの追加条件と、決裁の場に出すものの形
この章の目次(12)
  1. 1大きい順に手を付けてはいけない
  2. 2効果を4項目で点数にする
  3. 3難易度を4項目で点数にする
  4. 42軸で4つに割る
  5. 5「分割」を切り出す
  6. 6最初の1本に課す3つの条件
  7. 7着手順の表(ひな形)
  8. 812ヶ月に並べる(同時に2本まで)
  9. 9決裁の場で何を出すか
  10. 10すでに道具を入れると決めている場合
  11. 11よくある間違いを5つ
  12. 12この章の出口

着手順は、効果と難易度の2軸で決めます。ムダの大きい順ではありません。 一番大きいムダは、たいてい一番手強い場所にあります。部門をまたぎ、社外が絡み、規程を変えないと動かない——そこから始めた改善は、半年たっても1つも終わりません。 この章は、効果を12点・難易度を12点で採点し、4つの区分に割り、90日で終わる最初の1本を選ぶための章です。

この章で分かること

  • ムダの大きい順に手を付けてはいけない理由と、代わりに使う2軸の採点表
  • 効果と難易度をそれぞれ4項目で点数にする方法(感覚で決めないための型)
  • 最初の1本に課す3つの追加条件と、決裁の場に出すものの形

大きい順に手を付けてはいけない

6章で、ムダを年間の手数の大きい順に並べました。その1位をそのまま着手対象にすると、多くの会社で次のことが起きます。

起きること 理由
3ヶ月たっても着手できない 関係部門が3つあり、調整の会議だけで月日が過ぎる
途中で止まる 取引先の様式を変える合意が取れない
規程の改定待ちになる 承認ルートの変更に、取締役会の議決が要る
誰も成功を見ていない 最初の改善が終わらないので、2本目が始まらない

1本目が終わらない会社は、2本目に進めません。 棚卸しは1回で終わる仕事ではなく、回し続ける仕事です(12章)。1周目の目的は、最大の効果を出すことではなく、「決めて・やって・数えて・終わった」という1周を社内に見せることです。

だから着手順は、効果だけでは決めません。効果と難易度の2つを別々に採点し、2軸で並べます。大きくて手強いものは、捨てるのではなく「分割」に回します(後述)。

効果を4項目で点数にする

効果は4項目、各1〜3点、12点満点です。1項目目だけは6章のムダ棚卸し表から機械的に決まります。

項目 1点 2点 3点
年間の手数(6章の5列目) 下位3分の1 中位3分の1 上位3分の1
関わる人数 1人 2〜4人 5人以上
下流への波及(やり直し・待ちを生んでいるか) どちらも生んでいない どちらかを生んでいる 両方生んでいる
社外への影響 無い 社内から不満が出ている 顧客・取引先から指摘が来ている

1項目目は、ムダ棚卸し表を年間の手数で並べ替えて、上から3等分するだけです。絶対値ではなく自社の中の相対で付けます。他社と比べる必要はありません。

2項目目の「関わる人数」を入れているのは、改善が社内に波及するかを見るためです。1人しか関わらない作業をどれだけ改善しても、他の人のやり方は変わりません。逆に5人が同じ手順でやっている作業を直すと、直した手順がそのまま社内の標準になります。

3項目目が、この採点表で最も見落とされます。転記は、それ自体の手数より、下流で起きるやり直しと問い合わせのほうが大きいことがあります。 6章で「原因を遡るとその作業に行き着く」と書いた行には、必ず2点以上を付けてください。

4項目目は、効果を社外の言葉で言えるかどうかです。「取引先から納期回答が遅いと言われている」は、社内の合意を作る力が段違いに強いので、点数に入れています。

難易度を4項目で点数にする

難易度も4項目、各1〜3点、12点満点です。点が高いほど難しいという向きに統一します(効果と向きをそろえると、足し算をしたくなり、2軸の意味が消えます)。

項目 1点 2点 3点
関わる部門の数 1部門で完結 2部門 3部門以上
社外が絡むか 絡まない 取引先の合意が要る 契約・様式の変更が要る
決めごとの変更 不要 運用ルールを直せば済む 規程・承認ルート・法令の確認が要る
道具とデータ 今のままでできる 設定の変更・小さな道具で済む 新しい道具の導入・データの移し替えが要る

難易度は、やる人ではなく条件で付けてください。 「◯◯さんがやれば簡単」は難易度ではありません。その人が異動した瞬間に難易度が変わる採点は、表として機能しません。

4項目目に道具が入っていますが、ここで道具の種類を議論しないでください。 見るのは「今の道具のままでできるか/できないか」だけです。何を入れるかは8章と9章の話です。

3項目目の「決めごとの変更」は最大の難所です。承認ルートを1段減らすだけでも規程の改定と決裁が要ることがあります。規程に触るかどうかは、着手前に必ず確認してください。

2軸で4つに割る

効果12点・難易度12点が出たら、効果8点・難易度7点を境に4つに割ります。この境目は当社の決めごとです。効果は「4項目中3つで2点以上」、難易度は「4項目中3つが2点以下」に相当する位置で、1部門・90日で扱える大きさとおおむね一致するために置いています。

区分 効果 難易度 扱い
本命 8以上 7以下 ここから最初の1本を選ぶ
分割 8以上 8以上 難易度の低い部分を切り出して、本命に移す
片づけ 7以下 7以下 会議で議論しない。気づいた人がその場でやる
棚に戻す 7以下 8以上 やらない。理由を書いて残す

「片づけ」を会議の議題にしないでください。 効果も難易度も小さい改善(ファイルの置き場を決める、様式の項目名をそろえる、フォルダの命名規則を貼り出す)は、議論する時間のほうが高くつきます。担当を決めて、その場でやってもらう。代わりに、やったことだけは表に記録します(12章の月次で見ます)。

「棚に戻す」には必ず理由を書いてください。 半年後に「なぜあれをやらないのか」と必ず聞かれます。そのとき「効果7点・難易度9点・社外の契約変更が要るため」と答えられる会社と、答えられない会社では、次の棚卸しへの信頼がまったく違います。

「分割」を切り出す

最も重要なのは分割です。効果が大きくて手強い改善は、諦めるのでも突っ込むのでもなく、切り出せる部分を探します。

手強い改善の例 切り出せる部分 残りの扱い
受注から請求までを一本化する 受注一覧の二重管理をやめ、正の台帳を1つ決める 請求側は2周目
取引先の注文様式をそろえてもらう 上位5社だけ先に依頼する 残りは様式のまま受け、社内で吸収
承認ルートを3段から1段にする 金額の低い区分だけ先に1段にする 高額区分は規程改定を待つ
全件の目視確認をやめる 例外に当たる条件を決め、8割は確認を省く 例外の2割は今の手順のまま

切り出す基準は「その部分だけで、数が動くか」です。 数が動かない部分(準備・調査・資料作成)だけを切り出しても、効果が出ないので2本目に進めません。

切り出したものは、効果と難易度を付け直して表に戻します。多くの場合、効果は少し下がり、難易度は大きく下がって「本命」に入ります。

最初の1本に課す3つの条件

本命の中から最初の1本を選びます。点数が最も高いものではありません。 次の3つをすべて満たすものを選びます。

条件 確かめ方 満たさないときどうするか
90日以内に終わる 完了予定日を書いてみる 分割する
効果を数で言える 着手前の数字が取れるか(11章) 先に数字を取る期間を設ける
失敗しても元に戻せる 戻し方を1行で書けるか 戻せる形に変える(並行運用の期間を置く)

90日を上限にしているのは、当社の決めごとです。 理由は3つあります。①人事異動・繁忙期をまたぎにくい、②着手前に取った数字が古くならない(4章)、③1周目が終わらないまま年度が変わると、棚卸しそのものが「やったけど何も変わらなかったもの」として扱われる。

3つ目の条件も外せません。戻せない改善を1本目に選ぶと、現場は全力で反対します(10章)。「3ヶ月やってみて、ダメなら元に戻す」と言える形にすると、反対の多くは消えます。

着手順の表(ひな形)

ムダ棚卸し表(6章)の右側に、次の6列を足します。新しい表は作りません。

# 列名 書くこと 記入例
1 効果点 4項目の合計(12点満点) 10
2 難易度点 4項目の合計(12点満点) 6
3 区分 本命/分割/片づけ/棚に戻す 本命
4 順位 本命の中での順番 1
5 完了予定日 90日以内の日付 2026-12-15
6 戻し方 失敗したときどう戻すか(1行) 旧Excelを3ヶ月残し、いつでも戻せる

各項目の内訳(4項目それぞれの点)も、別のシートに残してください。半年後に「なぜこの順番なのか」を説明できることが、この表の価値です。

12ヶ月に並べる(同時に2本まで)

順位が付いたら、12ヶ月の予定に並べます。同時に走らせるのは2本までにしてください(当社の決めごと)。3本以上を同時に走らせると、現場の担当が重なり、どれも移行期の負担に耐えられなくなります(10章)。

時期 やること
1〜3ヶ月目 本命1本目。着手前の数字を取り、打ち手を実行し、90日後に判定(11章)
4〜6ヶ月目 本命2本目。1本目の判定結果を見てから着手する
7〜9ヶ月目 分割から切り出した1本。ここで初めて部門をまたぐものに触る
10〜12ヶ月目 2周目の対象(流れ)を選び直す(12章)

「片づけ」は、この予定に入れません。いつでも・誰でも・その場でやるものとして、別の一覧で持ちます。

12ヶ月分の手順に担当と期日まで入れる作業を自社でやり切れないときは、DX推進の計画づくり(計画づくり 50万円〜、計画+実行の伴走 月15万円〜、税別。初回相談と現状の整理は無料)のような形で外に頼む手もあります。ただし、点数表まで自社で作れているなら、計画は自社で書けます。

決裁の場で何を出すか

着手を決めるのは、1章の発注書6行目に書いた人です。その場に出すのは3枚だけにしてください。

枚数 出すもの 目的
1枚目 着手順の表(区分と順位まで入ったもの) 全体の見通しを見せる
2枚目 最初の1本の1枚(対象・現状の数字・打ち手・完了予定日・戻し方) 決める対象を1つに絞る
3枚目 棚に戻した行の一覧と理由 「なぜやらないか」を先に説明する

業務一覧表そのものを決裁の場に出さないでください。 50行の表を配ると、必ず「この行はどうなっているのか」という各論が始まり、着手の決定が次回に持ち越されます。詳細は求められたときに出せば十分です。

3枚目を先に出すのは、やらないことを先に説明した提案のほうが通りやすいからです。

すでに道具を入れると決めている場合

この章を読んでいる時点で、すでに特定のシステムを入れると決まっている会社があります。その場合、この章の2軸で全体の順番を決めたうえで、最初の1本の選び方は導入する道具の教科書に渡してください。

  • 業務システム(kintone)を入れると決めている場合 → kintoneの教科書 4章の点数表(6項目・18点満点・11点以上で着手)に渡します。3章の12列はそのまま使えます
  • サイト・LPを作ると決めている場合 → サイト制作の教科書 1章(作るべきかの判定)に渡します

ただし、順番を道具の都合で決めないでください。 「その道具で作りやすいから」を理由に1本目を選ぶと、効果の出ない場所から始めることになります。

よくある間違いを5つ

「ムダの大きい順に着手する」 ——最大のムダは最も手強い場所にあり、1本目が終わりません。直し方:効果と難易度を別々に採点し、本命(効果8以上・難易度7以下)から選ぶ。

「効果点と難易度点を足して1つの点数にする」 ——足すと「効果も難易度も中くらい」のものが上位に来て、どちらの意味も失われます。直し方:2軸のまま4区分に割る。足し算をしない。

「難易度を、担当者の力量で付ける」 ——人が替わると表が壊れます。属人的な改善は、その人が異動した時点で元に戻ります。直し方:部門数・社外・規程・道具の4条件だけで付ける。

「最初の1本に、一番効果の大きいものを選ぶ」 ——90日で終わらず、社内に成功が見えません。直し方:本命の中から、90日・数で言える・元に戻せるの3条件を満たすものを選ぶ。

「やらないと決めたものを、表から消す」 ——半年後に必ず蒸し返され、そのとき理由を説明できません。直し方:「棚に戻す」として理由付きで残し、決裁の場で先に説明する。

この章の出口

この章を終えたとき、手元にあるべきものは3つです。

  1. 着手順の表(効果点・難易度点・区分・順位・完了予定日・戻し方まで入ったもの)
  2. 最初の1本の1枚(対象・現状の数字・完了予定日・戻し方)
  3. 棚に戻した行の一覧(理由付き)

どれから手を付けるかが決まりました。ただし、何をするかはまだ決まっていません。 ここで「システムを入れよう」と言い出すのが、最も多い失敗です。打ち手の選択肢は6つあり、道具はその6番目です。次の章で、上から順に開いていきます。

次の章へ:8章 業務改善の手段の選び方|ツールは最後

この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)

点検リスト:着手順の決定(12項目)

着手を決裁する会議の前に付けます。

# チェック項目 ○の条件
1 効果の点数を、4章で数えた年間の手数から付けたか 感覚ではなく数から付いている
2 効果の4項目すべてに点が入っているか 空欄が無い
3 難易度の4項目すべてに点が入っているか 空欄が無い
4 難易度を、やる人ではなく条件で付けたか 「あの人がやれば簡単」が根拠になっていない
5 全行を4区分(本命・分割・片づけ・棚に戻す)に割り当てたか 全行に区分が入っている
6 「分割」の行について、切り出せる部分を検討したか 検討の結果が1行書いてある
7 「棚に戻す」の行に理由を書いたか 理由がある
8 最初の1本が90日以内に終わる大きさか 完了予定日が書いてある
9 最初の1本の効果を、数で言えるか 着手前の数字が取れている(11章)
10 最初の1本が、失敗しても元に戻せるか 戻し方が1行ある
11 決裁者が、この表を見て決めたか 決裁の日付と氏名がある
12 同時に走らせる改善が2本以下か 本数が決まっている

合格ライン=12項目中9以上。ただし 1・8・11 のどれかが×なら、着手を決めない。

  • 1が×:効果が感覚で付いています。順番が声の大きさで決まり、棚卸しをやった意味がなくなります
  • 8が×:90日で終わらない改善を1本目にすると、2本目が始まりません。1周目が終わらない会社は、棚卸しそのものをやめてしまいます
  • 11が×:決裁者が別の資料(または誰かの口頭説明)で決めていると、後から順番が覆ります。同じ表を見て決めたという事実が要ります

6が×でも進めますが、「分割」に入った行は、そのままでは永久に着手されません。 切り出しを検討しないなら、正直に「棚に戻す」へ移してください。

読んでも決めきれないところは、一緒に決めます

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更新日 2018年10月20日