株式会社COTSUBU

CHAPTER 01

ホームページを作る前に決めること

この章で分かること

  • 目的を1行にする方法と、目的を1つに絞らなければならない理由
  • 「作らない」「作り直さない」が正解になる5つの状況と、その見分け方
  • 3年でいくらかかるのかを6行で出す方法(初期費用で比べてはいけない理由)
この章の目次(9)
  1. 1サイトは「会社の置き場所」ではなく「1つの行動を起こさせる装置」
  2. 2目的は1つに絞る
  3. 3「何をさせるか」は、数えられる行動にする
  4. 4作らないほうがよい場合(先にここを潰す)
  5. 53年でいくらかかるのかを、6行で出す
  6. 6誰が決め、誰が窓口になるか
  7. 7公開希望日には、理由が要る
  8. 8よくある間違いを5つ
  9. 9この章の出口

サイトを作る前に決めるのは、デザインでもページ数でも予算でもありません。「誰に、何をさせるためのサイトか」の1行です。 この1行が無いまま進めると、以後のすべての判断が「好きか嫌いか」になります。色も、写真も、文章の長さも、公開日も、社内の誰かの好みで決まり、公開後に数字が動かなくても原因が分かりません。 この章は、目的を1行に絞り、成果の数え方を決め、そもそも作らないほうがよい場合を先に潰し、12項目で発注してよいかを判定するための章です。

この章で分かること

  • 目的を1行にする方法と、目的を1つに絞らなければならない理由
  • 「作らない」「作り直さない」が正解になる5つの状況と、その見分け方
  • 3年でいくらかかるのかを6行で出す方法(初期費用で比べてはいけない理由)

サイトは「会社の置き場所」ではなく「1つの行動を起こさせる装置」

会社のサイトを「自社の情報を置いておく場所」と考えると、判断の基準が消えます。置き場所なら、情報は多いほどよく、きれいなほどよく、新しいほどよいことになるからです。実際には、情報が多いサイトほど問い合わせは減ります。 読み手が何をすればよいか分からなくなるためです。

そこで、最初に次の1行を書きます。

このサイトは、(誰)に、(何)をさせるために作る。

括弧の中を埋めるだけです。例を挙げます。

  • 「地元の工務店の社長に、見積もりの相談フォームを送信させるために作る」
  • 「転職を考えている30代の施工管理経験者に、応募フォームを送信させるために作る」
  • 「取引を検討している会社の担当者に、この会社は実在して、この規模で、この業務ができると確認させるために作る」

3つ目のように「確認させる」が目的でも構いません。確認が目的なら、問い合わせ件数で評価してはいけないというだけの話です(数え方は後述します)。

目的は1つに絞る

「問い合わせも欲しいし、採用も強化したいし、会社の信用も上げたい」——これは目的が3つではなく、目的が0個の状態です。3つを同時に狙うと、トップページの一番上に何を置くかが決まりません。

主目的 主な読み手 成果の数え方 向くサイトの形
新規の問い合わせを取る まだ取引の無い会社・個人 月間の問い合わせ件数(入口別) コーポレートサイト/LP
広告費を受け止める 広告をクリックした人 広告からの問い合わせ件数・獲得単価 LP(1商品1枚)
応募を取る 求職者とその家族 月間の応募数・面接到達率・入社後の定着 採用サイト
売る 買う意思のある人 注文件数・客単価・カート離脱率 ECサイト
信用を確かめさせる 取引前に検索してきた人・金融機関・応募者 指名検索(社名検索)からの到達数、離脱率 コーポレートサイト

副次的な目的を持つこと自体は問題ありません。「主目的1つ、副次は明記」の形にしてください。副次は、主目的と競合したときに切り捨てる対象です。

「何をさせるか」は、数えられる行動にする

目的の後半(何をさせるか)は、数えられる行動でなければいけません。「知ってもらう」「信頼してもらう」は数えられないので、ゴールには置けません。

ゴール行動 数え方 備考
問い合わせフォームの送信 送信完了の記録 最も数えやすい
電話 電話番号のタップ数+着信数 パソコンからの電話は数えにくい。着信側で聞き取る
資料請求 ダウンロード数・送信数 連絡先と引き換えにする場合のみ成果になる
応募フォームの送信 送信完了の記録 求人媒体からの応募と分けて数える
購入 注文件数 決済まで完了した数
LINEの友だち追加 追加数 流入元を分けておく

ここで決めるのは件数の目標も含みます。「月に何件で成功と呼ぶか」を先に書いてください。 数字が書けない場合、公開後に「思ったより少ない」「いや、こんなものだ」という終わらない議論が始まります。

目標件数の決め方は、今の受注の逆算で足ります。年に何件受注したいか → そのうちサイト経由を何件にしたいか → 問い合わせから受注になる割合で割り戻す。この計算の途中で「今の受注件数を把握していない」ことが判明する会社は少なくありません。 その場合、サイトを作る前にそこを数えるほうが先です。

作らないほうがよい場合(先にここを潰す)

当社は、相談の入口で「作らないほうがよい」と答えることがあります。 作り直す必要のないサイトを作り直すと、80万円以上が不要にかかるためです。次の5つのどれかに当てはまるなら、いったん立ち止まってください。

症状 実際に起きていること 先にやること
作り直す理由が「古いから」しかない 見た目の話であって、数字の話をしていない 直近90日の流入と問い合わせ件数を見る。部分的に直して足りることが多い
問い合わせは来ているが、質が悪い サイトではなく、書いてある内容(対象・価格帯)の問題 既存ページの文言を直す。作り直す必要はない
そもそも商材が検索されていない 検索から人が来ない構造。作り直しても流入は増えない 広告・営業・紹介の導線を先に考える
価格が市場と合っていない サイトを直しても数字は動かない 価格・商品そのものを見直す
決裁者と担当がいない 途中で止まる。原稿の確認が返ってこない 人を決めてから発注する

3つ目と4つ目は、当社が正直に「サイトを直しても数字は動きません」とお伝えするケースです。ここを言わずに受注すると、公開後に必ず揉めます。

「作り直す」と「直す」の切り分け

最も多い相談は「全部作り直すべきか」です。次の表で切り分けてください。

状態 判断
スマホで見ると崩れる/10年以上前の作り 作り直しを検討する(部分対応のほうが高くつくことがある)
更新できる人が社内にいない/管理画面のIDが無い まず現制作会社と連絡が取れるか確認。取れないなら作り直し
見た目は古いが、流入と問い合わせがある 直す。 流入のあるページは残し、URLも変えない
特定のページだけ離脱が多い 直す。 そのページだけ作り直せばよい
ページ数は多いが、どれが読まれているか分からない まず調べる。仕分けをしてから決める

当社の場合、この仕分けだけを 現状分析(20万円〜) として単独で受けています。分析の結果、直すだけで足りると判断した場合は、リニューアルではなく サイト改善(改修 30万円〜)を提案します。20万円で80万円以上の判断ができるなら、先に分析するほうが安く済みます。

なお、当社に頼まずに自分で判断することもできます。必要なのは「直近90日の流入」「ページ別の流入数」「問い合わせ件数」の3つで、Search Console と GA4 が入っていれば自分で出せます(詳しくは SEOの教科書 2章・3章)。

3年でいくらかかるのかを、6行で出す

見積書を比べる前に、自社の総額の形を作ります。初期費用だけで比べると、公開後の費用が見えず、安く作った会社のほうが3年後に高くなることがあります。

行 中身 当社の場合(一例・税別)
1 制作費 コーポレートサイト 80万円〜(10ページ前後)
2 原稿・取材 制作費に含む(当社の決めごと。後述)
3 写真・撮影 別途。撮らずにイラストや図で構成する選択もある
4 運用・保守(36ヶ月分) 月5万円〜 × 36
5 サーバー・ドメイン(36ヶ月分) 共用サーバーなら月1,000円台で足りることが多い
6 社内工数 取材・確認・写真の手配にかかる自社の時間

6行目を書く会社はほとんどありませんが、実務では最も詰まる行です。 原稿の確認が返ってこない、写真が用意できない、という理由で公開が数ヶ月ずれるのは、この行を見積もっていないためです。

ここで、2行目について当社の決めごとを書きます。当社は「原稿をください」と言いません。 取材で事業の中身を引き出して、こちらで文章にします。理由は1つで、原稿待ちで数ヶ月止まるのが最も多い失敗だからです。発注側にお願いするのは事実確認だけです。他社に頼む場合も、「原稿は誰が書きますか」は必ず聞いてください。 ここが「御社」になっている見積もりは、金額が安く見えて、実際には自社の工数(6行目)が大きく積まれています。

誰が決め、誰が窓口になるか

体制で決めるのは3つだけです。

役割 人数 やること
決裁者 1人 最終的にデザインと公開の可否を決める
窓口 1人 制作側とのやりとりを集約する。社内の確認を取りまとめる
確認者 3人以内 事実確認とレビュー

決裁者が2人いるサイトは完成しません。 デザインの段階で意見が割れ、どちらも譲らないまま修正が往復します。修正回数の上限(通常は書面にあります)を使い切って、追加費用が発生します。

確認者を3人以内にするのは、増やすほど「念のため」の意見が増え、原稿が当たり障りのない文章に戻っていくためです。社内の全員が納得する原稿は、社外の誰にも刺さりません。

公開希望日には、理由が要る

「なるべく早く」は日付ではありません。動かせない理由のある日付だけが、本当の締切です。

理由 動かせるか
展示会・イベントの開催日 動かせない。逆算して進める
採用の募集開始時期 動かせない
期首・決算 おおむね動かせない
補助金の実績報告期限 動かせない。申請前に交付決定日を確認する
「なんとなく早いほうがいい」 動かせる

参考までに、当社の目安はコーポレートサイト(10ページ前後)で2ヶ月、LP(1枚)で最短2週間、EC(30商品まで)で2ヶ月半です。このうち作る作業の時間は一部で、多くは取材と原稿確認に使われます。 発注側が確認を早く返せば、コーポレートサイトで6週間程度で公開できることもあります。スケジュールを縮める手段は、急かすことではなく、確認を早く返すことです。

よくある間違いを5つ

「競合が作り直したから、うちも作り直す」 ——競合の目的は自社の目的ではありません。競合が採用のために作り直したのに、自社が問い合わせ目的で同じ構成を真似ると、載せるべき情報が丸ごとずれます。直し方:競合サイトは「どのページに何が書いてあるか」だけ見て、良し悪しの判断には使わない。

「デザインが古いから作り直す」 ——見た目が古いことと、問い合わせが来ないことは別の問題です。流入も問い合わせもあるサイトを作り直すと、検索で積み上げた評価を一度失います。直し方:作り直す理由を「数字で困っていること」に言い換える。言い換えられないなら、部分的に直す。

「ページ数を増やせば問い合わせが増える」 ——増えるのは管理する対象と、更新されないまま古くなるページです。10ページで足りるサイトを30ページにすると、読み手はどこを読めばよいか分からなくなります。直し方:ページを足す前に「このページが無いと誰が困るか」を1行で書く。書けないページは作らない。

「まず社内で原稿を書いてから発注する」 ——この順番で止まった会社を多く見ます。本業の合間に書く原稿は、半年経っても半分しか進みません。直し方:原稿を誰が書くかを発注時に決める。制作側が取材して書く契約にするか、社内の担当者の作業時間を業務として確保する。どちらもできないなら、発注時期を遅らせる。

「とりあえず全部載せておく」 ——載せた情報は、全部が古くなります。3年前の実績、退職した社員の紹介、終了したキャンペーン。古い情報が載っているサイトは、無いより信用を下げます。 直し方:載せる情報に「いつ見直すか」を付ける。付けられない情報は載せない。

この章の出口

この章を終えたとき、手元に残っているべきものは3つです。

  1. 目的の1行(誰に・何をさせるか。主目的1つ、副次は明記)
  2. ゴール行動と、月間の目標件数(数え方も決まっている)
  3. 3年総額の6行と、決裁者・窓口の名前

この3つがあれば、「何のために、いくらまで出して、誰が決めるか」が決まっています。決まっていないのは何が載っていて、誰が直すかです。ここを書かないまま相見積もりを取ると、各社が違う前提で見積もるため、金額を比べること自体ができません。

次の章へ:2章 サイトの要件定義|発注側が埋める表

この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)

点検リスト:サイトを作る前の判断(12項目)

上をその場で○×が付けられる形にしたものです。発注する前に、発注側だけで埋められます。

# チェック項目 ○の条件(合格の状態)
1 このサイトの目的が1行で書けている 「誰に・何をさせる」の形で1文になっている
2 目的が1つに絞られている 主目的が1つ。ほかは副次と明記されている
3 読み手を実在の3人で挙げられる 直近1年の問い合わせ・辞退・応募から実例を3件挙げた
4 ゴール行動が1つ決まっている 問い合わせ・応募・購入・資料請求のどれか1つ
5 そのゴールを数える方法が決まっている 送信完了・電話・LINE を入口ごとに数えられる
6 成功と呼ぶ月間件数が決まっている 「月◯件」と数字で言える
7 今のサイトの数字を見た 直近90日の流入と、問い合わせ件数を確認した
8 「直す」で足りないことを確認した 作り直しの理由が「古いから」以外にある
9 3年総額を6行で出した 制作費・原稿・撮影・運用・サーバードメイン・社内工数
10 予算の上限が決まっている 金額が1つ書いてある(幅ではない)
11 決裁者と窓口が1人ずつ決まっている 名前が書いてある
12 公開希望日に理由がある 展示会・期首・採用時期など、動かせない理由がある

合格ライン=12項目中9つ以上で発注に進んでよい。ただし 1・4・11 のどれかが×なら、何点でも発注しない。

この3つを必須にしている理由は同じです。この3つが×のまま進めると、良い会社に、正しい金額で、誰も使わないサイトを作ってもらうことになります。 目的が無ければ何を作っても正解になり、ゴールが無ければ成果を判定できず、決裁者がいなければ完成しません。

7・8が×の場合は、制作ではなくサイト改善を先に検討してください。この2つは、作らずに済ませられる可能性を見る項目です。

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更新日 2018年10月20日