CHAPTER 01
コンバージョンの決め方|先に出口から決める
この章で分かること
- 売上から逆にたどって「数えるもの」を決める手順と、出口を1つに絞る理由
- 数える単位(件・人・回)の決め方と、単位を取り違えたときに何がおかしくなるか
- 「数えない」と決めてよいものと、目標に置いてはいけない数字(PV・滞在時間・登録数)
この章の目次(10)
- 1計測は、出口から逆に書く
- 2出口は1つに絞る
- 3数える単位を決める(件・人・回)
- 41件の定義は、1行で書けるまで削る
- 5中間の行動は「原因を探すため」に数える。目標にはしない
- 6「数えない」と決めるのも設計のうち
- 7計測設計シート(1枚)
- 8数字の持ち主を1人決める
- 9よくある間違いを5つ
- 10この章の出口
計測は、道具の設定から始めると必ず失敗します。最初にやる作業は、「何が起きたら商売になったと言えるか」を1行で書くことです。 GA4もGTMも、その1行を数えるための道具でしかありません。出口を決めずに設定から入ると、項目だけが増え、半年後には誰も開かない画面が残ります。 この章は、売上から逆にたどって数えるものを決め、数えないものを決め、計測設計シート1枚に落とすための章です。
この章で分かること
- 売上から逆にたどって「数えるもの」を決める手順と、出口を1つに絞る理由
- 数える単位(件・人・回)の決め方と、単位を取り違えたときに何がおかしくなるか
- 「数えない」と決めてよいものと、目標に置いてはいけない数字(PV・滞在時間・登録数)
計測は、出口から逆に書く
計測設計でよくある進み方は、「GA4に何が入っているか見てみる → 取れそうなものを取る」です。この順番だと、取りやすいものばかりが並びます。 取りやすい数字(PV・滞在時間・スクロール)は、たいてい売上から遠い数字です。
順番を逆にします。上の段から決めて、下の段に降りていきます。
| 段 | 決めること | 例 | 数字の出どころ |
|---|---|---|---|
| 1 | 売上 | 年間の受注金額、月の粗利 | 会計・請求書 |
| 2 | 受注 | 何件の受注で、その売上になるか | 受注台帳・見積書 |
| 3 | 問い合わせ(=出口) | 何件の問い合わせで、その受注数になるか | 受付台帳(メール・電話メモ・CRM) |
| 4 | 中間の行動 | 問い合わせの手前で何が起きているか | GA4・GTM |
計測ツールが答えを持っているのは4段目だけです。 1〜3段は自社の記録の中にあります。ここを先に書くと、「GA4で何を見るべきか」は自動的に決まります。逆に1〜3段が空欄のままGA4を開くと、何を見ても判断に使えません。
1段目と2段目は、正確でなくて構いません。去年の実績から概算で出せば十分です。 ここで求めているのは精度ではなく、「4段目に何を置くか」を決めるための向きです。
出口は1つに絞る
出口とは、「これが起きたら、あとは営業の仕事」と言い切れる行動です。これを1つに決めます。理由は3つあります。
- 出口が複数あると、増減の解釈が割れます。 「問い合わせは減ったが資料請求は増えた」は、良かったのか悪かったのか誰も答えられません
- 改善の順番が決まらなくなります。 直す場所は、出口に近いところから順に直すのが原則です(サイト制作の教科書11章)。出口が3つあると、近い順が3通りできます
- 広告の最適化が散ります。 入札に使う成果の絞り方はWeb広告運用の教科書3章が扱いますが、その前提になる「主の出口」はここで決めます
事業が複数あるなら、事業ごとに1つです。1つの会社に出口を1つ、ではありません。
| 会社の形 | 出口(1つに決める) | 出口にしないもの(中間の行動として数える) |
|---|---|---|
| 受託・制作・BtoBサービス | 問い合わせフォームの送信完了 | 資料ダウンロード、料金ページの閲覧 |
| 店舗(来店してもらう商売) | 予約の完了、または電話の発信 | 地図のクリック、営業時間ページの閲覧 |
| EC | 購入の完了 | カートに入れる、会員登録 |
| 採用 | 応募の完了 | 求人一覧の閲覧、社員インタビューの閲覧 |
| 士業・クリニック | 予約の完了 | 電話番号ページの閲覧 |
「資料ダウンロード」を出口にしてよいのは、ダウンロードした人に必ず営業が接触する体制がある会社だけです。 送った後に誰も何もしないなら、それは出口ではなく中間の行動です。
数える単位を決める(件・人・回)
同じ「3」でも、3件と3人と3回は意味が違います。単位を決めずに比べると、増えたのか減ったのか分からなくなります。
| 単位 | 数えているもの | 向く用途 | 注意すること |
|---|---|---|---|
| 件(発生した回数) | 行動が起きた回数そのもの | 受注見込みの母数、広告の成果 | 同じ人が3回送ると3件になる |
| 人(何人が行ったか) | 行動した人の数 | 新規の広がりを見る | ブラウザや端末が変わると別人に見える |
| 回(訪問の回数) | 行動が起きた訪問の数 | 流入経路ごとの比較 | 時間が空くと同じ人でも別の回になる(3章) |
当社の決めごとは、出口は「件」で数えることです。 理由は、受付台帳(メール・電話のメモ・CRM)が件で並んでいるからです。突き合わせる相手と単位をそろえておかないと、月末に照合できません。
ただし、同じ人が同じ日に2回送ったものは、台帳側では1件にまとめることがあります。ここは決めの問題です。「重複した送信をどう数えるか」を先に決めて、書いておいてください(4章で設定に落とします)。
1件の定義は、1行で書けるまで削る
出口が決まったら、「何が起きたら1件と呼ぶか」を1行で書きます。ここが曖昧なままだと、実装する人ごとに違うものを数えます。
| 悪い定義 | なぜ悪いか | 良い定義 |
|---|---|---|
| 問い合わせがあったとき | 何をもって「あった」のか決まっていない | 問い合わせフォームの送信が完了し、完了画面が表示されたとき |
| ボタンを押したとき | 押したが送信に失敗した人も入る | 送信が成立し、社内に通知メールが届く状態になったとき |
| 電話があったとき | Webでは通話の成立を知れない | スマートフォンで電話番号のリンクを押したとき(=発信を試みた回数。通話の成立数ではない) |
| 資料請求があったとき | ファイルを開いただけの人も入る | 資料請求フォームの送信が完了したとき |
「送信ボタンを押した」と「送信が完了した」は別のものです。 入力エラーで止まった人、二重送信を防ぐ処理で弾かれた人、通信が切れた人が、前者には入ります。数えるのは完了です。
中間の行動は「原因を探すため」に数える。目標にはしない
出口が減ったとき、どこで減ったのかを知るために中間の行動を数えます。中間の行動は原因の切り分けに使うもので、目標ではありません。
| 中間の行動 | 動いたときに分かること | これを目標にすると起きること |
|---|---|---|
| 料金ページの閲覧 | 検討段階の人が来ているか | 料金ページを見せることが目的化する |
| フォームの表示 | 入口までは来ているか(表示があって送信が無い=フォームが壊れている疑い) | — (切り分けに有用。ただし目標にはしない) |
| 資料ダウンロード | 情報収集層の量 | 出口の少なさが隠れる |
| 電話番号のクリック | 電話が主導線かどうか | 間違いタップも成果に見える |
中間の行動は3つまでにしてください。 増やすほど、毎月の判断は遅くなります。
そして、PV・滞在時間・直帰率は目標にしません。 これらは「増えたら良い」とは限らない数字だからです。滞在時間が延びたのは、読み込まれているからかもしれませんし、探しているものが見つからないからかもしれません。どちらとも読める数字は、判断に使えません。
「数えない」と決めるのも設計のうち
全部を数えようとすると、設定は終わらず、壊れたときに直す場所も増えます。次のどれかに当てはまるものは、数えないと決めてよいものです。
| 条件 | 例 | 判断 |
|---|---|---|
| 精度が出ないのに、精度が要る使い方をしたい | 通話の成立数、来店数 | Web側では数えない。台帳側で数える |
| 数える手間が、得られる判断より大きい | ページごとのスクロール量 | 数えない |
| 見る人が決まっていない | 代理店から提案されたが自社で使い道が無い指標 | 数えない |
| 月に数件しか起きない | 年に2回のイベント申込 | 数えない(台帳で足りる) |
ただし、「数えないと決めた」ことを1行書き残してください。 半年後に「電話の件数が入っていない」と揉めるのは、決めていなかったときだけです。決めた記録があれば、それは仕様です。
計測設計シート(1枚)
この章の成果物は、次の8欄が埋まった紙1枚です。このシートが、3章以降のすべての設定の根拠になります。
| 欄 | 書くこと | 記入例 |
|---|---|---|
| 1 出口 | 1つだけ | 問い合わせフォームの送信 |
| 2 1件の定義 | 何が起きたら1件か(1行) | 送信が完了し、完了画面が表示されたとき |
| 3 単位 | 件・人・回のどれか | 件 |
| 4 重複の扱い | 同じ人の複数回をどう数えるか | 同一人物の同日中の2回目以降は台帳側で1件にまとめる |
| 5 中間の行動 | 3つまで | 料金ページ閲覧/フォーム表示/電話リンクのクリック |
| 6 数えないもの | 理由つき | 通話の成立数(Web側で精度が出ないため。台帳で数える) |
| 7 突き合わせる台帳 | 何と照合するか・担当・頻度 | 問い合わせ受付表(営業部・毎月5日) |
| 8 見る人と頻度 | 氏名と頻度 | ◯◯/月1回・15分 |
8欄目が空のシートは、設計が終わっていません。 見る人が決まっていない数字は、壊れても誰も気づきません(8章)。
数字の持ち主を1人決める
計測の事故は、静かに起きます。エラーは出ず、件数が0になるだけです。そして0件は「今月は反応が悪かった」に見えるので、1〜2か月は気づかれません。
防ぐ方法は1つだけです。毎月、同じ人が、同じ画面を開くこと。 委託先がレポートを作っている場合でも、自社側に受け取って読む人を1人置いてください。 「代理店が見ているはず」は、誰も見ていない状態とほぼ同じです。
この章は無料でできます。当社のアクセス解析・計測設計では計測診断を無料で行っています(GA4・GTMの設定は15万円から、レポート画面の作成は10万円から、月次レポートと改善提案は月5万円から。すべて税別)。シートを自分で書いてから相談すると、頼む範囲が「自分で埋められなかった欄」だけに絞れます。
よくある間違いを5つ
「まずGA4を入れて、取れるものを見てから考える」 ——取れるものから考えると、取りやすい数字(PV・滞在時間)が並びます。判断に使えない画面ができ、やがて開かれなくなります。直し方:設計シートの1〜4欄を先に埋める。埋まるまで設定作業に入らない。
「出口を3つ置いた(フォーム・電話・資料請求)」 ——3つあると、増減の解釈が割れます。直し方:主の出口を1つ決め、残りは中間の行動として数える。事業が複数あるなら事業ごとに1つにする。
「PVと滞在時間を毎月の目標にしている」 ——どちらも、増えた理由が2通り以上あります。直し方:目標は出口の件数1つに置く。PVと滞在時間は、件数が動いた理由を探すときだけ開く。
「先月は問い合わせ12件、今月は15人だった」 ——件と人を混ぜています。単位が違う数字を並べても、増減は分かりません。直し方:設計シートの3欄(単位)を決め、レポートの見出しにも単位を書く。
「代理店のレポートに載っている項目を、そのまま自社の目標にした」 ——レポートの項目は、その会社が作りやすい項目です。自社の出口と一致しているとは限りません。直し方:設計シートを先に自社で書き、そこに無い項目は「参考」と明記してもらう。
この章の出口
手元に残っているべきものは3つです。
- 計測設計シート1枚(8欄すべて埋まっている)
- 売上から出口までの概算(売上・受注件数・問い合わせ件数)
- 数字を見る人の氏名と頻度
次は、この設計と、いま実際に動いている計測がどれだけ食い違っているかを確かめます。多くの会社では、設定は入っているのに、設計とは違うものを数えています。60分で判定できます。
次の章へ:2章 GA4とGTMの設定を点検する手順
この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)
点検リスト:数える対象の設計(12項目)
GA4やGTMを触る前に、この12項目を通してください。 所要は30分です。
| # | チェック項目 | 合格ライン |
|---|---|---|
| 1 | 出口が1つに決まっている | 事業ごとに1つ。紙に書いてある |
| 2 | 1件の定義が1行で書いてある | 「送信が完了したとき」のように、起きたかどうかを他人が判定できる |
| 3 | 単位(件・人・回)が決まっている | 出口の単位が、突き合わせる台帳の単位と同じ |
| 4 | 重複した行動の扱いを決めている | 同じ人の複数回を数えるか・まとめるかが書いてある |
| 5 | 売上から出口までを逆にたどった | 売上・受注件数・問い合わせ件数の3つが概算で並んでいる |
| 6 | 中間の行動が3つ以内 | 4つ以上並んでいない |
| 7 | 数えないものを決めて、理由を書いた | 1つ以上書いてある(空欄は「決めていない」とみなす) |
| 8 | PV・滞在時間・直帰率を目標にしていない | 目標欄にこれらが入っていない |
| 9 | 突き合わせる台帳が決まっている | 台帳の名前・担当者・頻度が書いてある |
| 10 | 数字を見る人が1人決まっている | 氏名が書いてある(「代理店」は不可) |
| 11 | 見る頻度が決まっている | 月1回以上 |
| 12 | 設計シートの日付が入っている | 作成日が書いてある(設定変更の起点になる) |
合格ライン=12項目中9以上。ただし 1・2・10 が×なら、点数に関係なく先に直します。
- 1が×:出口が複数あると、以降のすべての判断で解釈が割れます
- 2が×:実装する人ごとに違うものを数えます。数字が合わない原因の最上流です
- 10が×:誰も見ない数字は、壊れても気づきません。計測の事故は静かに起きます
10はその場で決められます。 1と2も、決めるだけなら30分で終わります。必須3項目は、今日終わる作業です。
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更新日 2018年10月20日
