株式会社COTSUBU
kintone

kintoneを定着させる|作った後に誰が直すかを決める

宇田川 将也|11分
kintone定着運用社内教育内製化

kintoneが使われなくなる理由は、機能でも研修でもなく、「直す人が決まっていない」です。

使い始めれば必ず「項目が1つ足りない」「一覧の並びを変えたい」が出ます。そのとき直せる人が社内にいなければ、現場は待つのをやめてExcelに戻ります。作る前に、直す人・直し方・止まったことに気づく方法の3つを決めてください。

この記事は「作った後に回し続ける仕組み」の話です。社内の人がどこまで自分で作れるようになるか(内製化の到達点と教え方)は15章 運用・定着と内製化に分けています。内製化は「作れる人を育てる」話、定着は「作ったものを使われ続ける状態にする」話です。順番としては定着が先で、内製化はその延長にあります。

使われなくなる5つの原因

原因 現場で起きること 効く手
直す人がいない 要望が宙に浮き、3か月で諦められる 主担当・副担当を決め、時間を確保する
入力が増えるだけで、返ってこない 「入れても誰も見ていない」 毎朝見る一覧を1つ作り、会議で使う
入力が重い 必須項目が多く、現場が後回しにする 必須を10個以内に。例外は備考で吸収
二重入力が残った Excelもkintoneも書く羽目になる 片方を必ず止める。並行運用は1か月まで
止まったことに誰も気づかない 半年後に「あのアプリ、誰も使ってない」 月1回、入力件数を見る

とくに「二重入力が残った」は致命的で、Excelを止めないまま始めた業務は、ほぼ確実に元に戻ります。

直す人を決める

1人にしない

いちばんやってはいけないのが、詳しい人が1人だけいる状態です。その人が休んだ日、異動した月、辞めた週に、全部止まります。

決めるのは3つの役割です。兼任で構いませんが、名前を書いて周知してください。

役割 やること 人数
主担当 項目の追加、一覧・グラフの変更、現場からの相談の受け口 1人
副担当 主担当が不在のときに同じことをする 1人以上
業務のオーナー 「その変更をしてよいか」を決める(部署長でよい) 1人

アプリ管理権限は必ず2人以上に渡します(→kintoneの権限設計)。逆に、全員に渡すと項目が勝手に消えるので、そこは絞ります。

時間を業務として確保する

「余裕があるときにやってね」は、確保していないのと同じです。月2時間でよいので、上長が業務として認めた時間を置いてください。

実務では、月1回30分の定例(要望を見て、直すものを決める)+ 作業1時間半、くらいで回ります。この形にすると、要望が溜まっても「次の定例で見る」と言えるので、主担当が断りやすくなります。

直す人を選ぶ基準

情報システム担当である必要はありません。むしろその業務をいちばん分かっている人のほうが向いています。

向いている 向いていない
その業務を毎日やっている 業務を知らない(何を直すべきか判断できない)
Excelの関数を自分で直せる 「触ると壊れそう」と思っている
現場から相談されやすい立場・月2時間を確保できる 権限だけ持っていて現場にいない

変更の手順を決める

要望が来るたびに場当たりで直すと、誰が何を変えたか分からないアプリになります。手順は5ステップで足ります。

  1. 窓口に出す — スペースのスレッドか、要望受付アプリを1つ作る。口頭とチャットの個別DMは受けない
  2. オーナーが決める — 「やる/やらない/後で」。やらないものも記録に残す
  3. 戻せる変更かを見る — 下の表で判断する
  4. 直して、アプリを更新する — kintoneの設定変更は「アプリを更新」を押すまで現場に反映されません。 ここが最後の確認ポイント
  5. 変えたことを伝える — 変更した日・内容・影響のある人を、窓口と同じ場所に書く

戻せる変更・戻せない変更

変更 戻せるか やり方
フィールドを足す 戻せる そのまま直してよい
一覧・グラフを足す/直す 戻せる そのまま直してよい
必須にする・外す 戻せる 既存レコードは空欄のまま残る点だけ周知
選択肢を足す・プラグインの設定を変える 戻せる 変更前の設定をメモしてから
フィールドを消す 戻せない 中のデータごと消える。CSVで書き出してから
フィールドの型を変える(作り直し) 戻せない アプリをコピーして試す(→フィールド設計)
プロセス管理を変える 戻しにくい 進行中のレコードの扱いを決めてから
JavaScriptを入れ替える 戻せる(ソースがあれば) ソースを必ず社内に保管

kintoneには本番と別のテスト環境がありません。戻せない変更は「アプリをコピーして、コピー側で試す」のが実務的な回避策です。データを含めずにコピーできるので、設定だけの検証ならすぐ終わります。

止まったことに気づく

定着していないアプリは、静かに止まります。 誰も報告してくれないので、こちらから見に行く必要があります。

月1回、次の2つだけ見れば十分です。

  • アプリごとの直近30日の入力件数
  • 想定していた件数との差

一覧の絞り込みでも出せますが、アプリが増えたらまとめて数えたほうが早いです。

// ブラウザのコンソールで実行する。アプリごとの直近30日の入力件数を数える
(async () => {
  const APPS = [10, 11, 12];   // 見たいアプリID
  const rows = [];

  for (const app of APPS) {
    const info = await kintone.api('/k/v1/app', 'GET', { id: app });
    const res = await kintone.api('/k/v1/records', 'GET', {
      app,
      query: '作成日時 > FROM_TODAY(-30, DAYS) limit 1',
      fields: ['$id'],
      totalCount: true,
    });
    rows.push({ アプリ: info.name, 直近30日の件数: Number(res.totalCount) });
  }

  rows.sort((a, b) => a.直近30日の件数 - b.直近30日の件数);
  console.table(rows);
})();

上に来たアプリから見ます。0件なら、止まっているのではなく「そもそも要らなかった」可能性も考えてください。使われていないアプリを残しておくと、引き継ぎのときに全部が重荷になります。要らないものは、CSVで書き出してから消します。

件数だけでは分からないことは、現場に1つだけ聞きます。「これ、いま何が面倒ですか」。 「使ってますか」と聞くと「使ってます」としか返ってきません。

研修のやり方

研修で身につくかどうかは、題材で9割決まります。

COTSUBUは島根県海士町の役場で、電子決裁と定期健診管理を構築し、職員と島留学生への研修を行いました。そこで実際に効いたやり方を、そのまま書きます。

題材は「本人が毎週やっている面倒な作業」にする

研修用の架空の課題では残りません。Excelの転記、紙の集計、毎月同じ表を作る作業。本人が「これが面倒だ」と言ったものを題材にします。

題材が自分ごとだと、研修が終わったあとも自分で触り続けます。ここが分かれ目です。

1回で教えることを絞る

初回に説明するのは3つだけにします。

  • アプリとレコードの関係(1レコードが何を表すか)
  • フィールドの型(文字列・数値・日付・ドロップダウン)
  • 一覧の絞り込みと並び替え

権限もプロセス管理もルックアップも、初回では教えません。 詰め込むと手が止まります。必要になったときに教えるほうが、3倍速く覚えます。

その週のうちに実務で使わせる

作ったものを翌週まで寝かせると、忘れます。作ったその週に本番のデータを入れてもらうと、必ず不便が出ます。「この項目が足りない」「並び順を変えたい」。この不便が、次に教える内容そのものです。直したいという動機があるときだけ、人は新しい機能を覚えます。

人数は1回4名程度まで

それ以上だと、手が止まった人に気づけません。頻度は週1回よりも、2週間に1回×数回のほうが、間に実務が挟まって定着します。

引き継ぎの作り方

担当者が代わる前提で、5つだけ残します。作った会社が持っている状態は、引き継ぎとは言いません。

残すもの 中身 更新のタイミング
アプリ一覧 アプリ名・用途・管理者・使う部署・作った日 アプリを作ったとき
項目一覧 フィールド名・フィールドコード・型・必須・選択肢 項目を変えたとき
プラグイン一覧 入れているプラグインと、その設定内容 設定を変えたとき
JavaScriptの置き場所 ソースの保管場所・誰が書いたか・何をしているか 入れ替えたとき
外部連携の一覧 APIトークン・Webhook・連携先・用途 作ったとき

項目一覧は手で作らなくても、アプリの設定から書き出せます。コードまで含めて一覧にする方法はフィールド設計の記事に載せています。

置き場所は1か所にまとめてください。 担当者のPCの中ではなく、kintoneのスペースにファイルとして置くか、共有フォルダに固定します。

外部の会社に作ってもらった場合は、この5つが納品物に入っているかを契約前に確認してください(→kintoneパートナーの選び方)。入っていない会社に頼むと、自社で直せない状態が続きます。

内製化とのつながり

定着ができていないうちに内製化を目指すと、作れる人は育ったのに、作ったものが使われないという状態になります。順番はこうです。

段階 ここでやること 判断の目安
1. 定着 直す人を決め、入力件数を月1回見る 3か月、入力件数が落ちていない
2. 直せる 項目の追加・一覧の変更を社内でやる 外注の依頼が月0〜1件になった
3. 作れる 新しい業務を社内で設計・構築する 2業務目を自分たちで立ち上げられた

1と2のあいだが、いちばん脱落します。 ここを越えるために必要なのは技術ではなく、時間の確保と権限です。3の段階の育て方は15章 運用・定着と内製化にまとめています。

カスタマイズと外部連携は、内製化してもなお外に置いたほうが安く済む領域です。標準機能の範囲は社内、それを超える部分は外部という線引きが現実的です。

COTSUBUの関わり方と費用

構築だけして引き上げる形にはしていません。1業務1アプリまで、構築は最大1か月0円です。使うと決めていただいた場合だけ、月5万円〜(最低12ヶ月)で、改善の作業、質問対応、月1回の定例を続けます。この定例が、上に書いた「月1回、要望を見て直すものを決める」の場そのものです。

kintoneのライセンス料(スタンダードコース 1ユーザー月1,800円・税抜/最小10ユーザー)は別途、サイボウズ社とのご契約です。

使っている無料プラグインは23本すべて公開していて、外部のサーバーと通信しません。当社との契約が終わっても、そのまま使い続けられます。

まとめ

  • 定着しない原因のほとんどは「直す人が決まっていない」
  • 直す人は2人以上。主担当・副担当・業務のオーナーを名前で決める
  • 月2時間でよいので、上長が業務として認めた時間を確保する
  • 要望の窓口を1か所にし、変更したことを同じ場所に書く
  • 設定変更は「アプリを更新」まで反映されない。戻せない変更はアプリをコピーして試す
  • 月1回、直近30日の入力件数を見る。0件のアプリは止まっているか、要らなかったか
  • 研修の題材は、本人が毎週やっている面倒な作業にする。初回は3つだけ教える
  • 引き継ぎに残すのは5つ。アプリ一覧・項目一覧・プラグイン・JSの置き場所・外部連携
  • 定着ができてから内製化。順番を逆にすると、作れる人だけが育つ

→ kintone導入支援の詳細 → 15章 運用・定着と内製化 → kintone導入で失敗する5つのパターンと対策 → kintoneの権限設計

よくある質問

kintoneが定着しないのはなぜですか

ほとんどの場合、直す人が決まっていないからです。使い始めれば必ず「項目が足りない」「一覧の並びを変えたい」が出ますが、直す人がいないと、そのままExcelに戻ります。機能や研修より先に、直す人とその人の作業時間を決めてください。

kintoneを直す人は社内に何人必要ですか

2人以上です。1人だと、その人が休んだ日・異動した月に全部止まります。アプリ管理権限を2人以上に渡し、主担当と副担当を決めてください。あわせて、その人が月に何時間この作業に使ってよいかを、上長が業務として認めておく必要があります。

運用中のアプリを直すとき、テスト環境は必要ですか

小さな変更なら不要です。kintoneの設定変更は「アプリを更新」を押すまで現場に反映されないため、その手前で戻せます。ただしフィールドの削除・型の作り直し・プロセス管理の変更のように戻せない変更は、アプリをコピーして試してから本番に入れてください。

社内研修はどうやれば身につきますか

研修用の課題ではなく、参加者が毎週やっている実際の面倒な作業を題材にします。COTSUBUが島根県海士町で行った研修も、職員と島留学生に対して、実際の業務を題材に進めました。1回で教える内容を絞り、作ったものをその週のうちに実務で使わせるのが、いちばん残ります。

担当者が辞めてもkintoneを引き継げるようにするには何を残しますか

アプリ一覧(用途・管理者・利用部署)、アプリごとの項目一覧(フィールドコード付き)、入れているプラグインとその設定、JavaScriptのソースの置き場所、外部連携のAPIトークンの一覧、の5つです。これが揃っていれば、引き継ぐ人が1日で全体像をつかめます。

宇田川 将也/ 代表取締役

2024年に総務省の地域活性化起業人として島根県海士町に着任。役場に住み込んで業務改善に従事し、kintoneで電子決裁や定期健診管理を構築しました。

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