CHAPTER 03
業務の書き出し方|粒度をそろえる
この章で分かること
- 1業務=1行にする粒度の基準(3つのテスト)と、大きすぎ・小さすぎの直し方
- 書き出し用の表のひな形(12列)と、各列に何を書くか
- 1人30〜60分の聞き取りで、書かれにくい業務を引き出す質問
この章の目次(9)
- 1粒度は3つのテストでそろう
- 2大きすぎる行・小さすぎる行
- 3業務名は動詞で終える
- 4書き出し用の表のひな形(12列)
- 5聞き取りは1人30〜60分・5つの質問
- 6行数の目安と、終わりの判断
- 7空欄は推測で埋めない
- 8よくある間違いを5つ
- 9この章の出口
棚卸しの本体は、1業務=1行の表です。図でも文章でもありません。 書き出しで失敗する原因はほぼ1つ、行の大きさがそろっていないことです。「営業活動」と「注文書をスキャンする」が同じ表に並ぶと、数えることも並べることもできません。 この章は、粒度を3つのテストでそろえ、12列の表に25〜50行を書き切るための章です。
この章で分かること
- 1業務=1行にする粒度の基準(3つのテスト)と、大きすぎ・小さすぎの直し方
- 書き出し用の表のひな形(12列)と、各列に何を書くか
- 1人30〜60分の聞き取りで、書かれにくい業務を引き出す質問
粒度は3つのテストでそろう
「どのくらいの大きさで書けばいいですか」に、感覚で答えると人によってばらつきます。次の3つを全部通ったら1行、と決めてください。
| # | テスト | 通らないときの意味 |
|---|---|---|
| 1 | 担当が1人(または1つの役割)に決まるか | 途中で人が変わるなら、それは複数の業務。人が変わる場所で割る |
| 2 | 始まりの出来事と、終わりの状態を言えるか | 言えないなら、大きすぎるか、業務ではなく「状態」を書いている |
| 3 | 1回あたりの時間を「分」で言えるか | 「日による」としか言えないなら大きすぎる。数分で終わるなら小さすぎる |
3番は目安です。1回15分〜2時間に収まる大きさが、この表の1行です。15分未満なら前後とまとめ、2時間を超えるなら割ります。
もっとも効くのは1番です。担当が変わる場所は、必ず行を分ける。 この本が流れで切っている(2章)のは、受け渡しを見るためでした。担当が変わる場所で行を割らないと、受け渡しが表から消えます。
大きすぎる行・小さすぎる行
| 書かれた行 | 判定 | 直し方 |
|---|---|---|
| 営業活動 | 大きすぎ(担当も始まりも終わりも言えない) | 「見積依頼を受ける」「見積を作成する」「見積を送付する」に割る |
| 受注処理 | 大きすぎ(営業→事務→倉庫で人が変わる) | 「注文内容を確認する」「販売管理に登録する」「出荷指示を出す」に割る |
| 月末対応 | 大きすぎ(複数の業務の束) | 業務ごとに割る。定期業務なので別表(2章) |
| 注文書をスキャンする | 小さすぎ(数分) | 前後とまとめて「注文書を受け取り、内容を確認して保管する」 |
| Excelを開く | 小さすぎ(作業の一部) | 行にしない |
| 顧客管理 | 業務ではない(状態・機能の名前) | 「新規顧客を台帳に登録する」「住所変更を反映する」に書き換える |
| 部長承認 | 行にしてよい(待ちが発生する場所) | ただし担当は「部長」、所要は待ち時間として6章で数える |
最後の行に注意してください。承認・確認・回覧は、作業時間が短くても1行にします。 ここが待ち時間の発生源であり、6章でムダを見つける最大の手がかりになるからです。
業務名は動詞で終える
名詞で終わる業務名(「見積管理」「請求業務」)は、粒度がずれる最大の原因です。「◯◯を◯◯する」の形に統一してください。
| 名詞止め(×) | 動詞で終える(○) |
|---|---|
| 見積管理 | 見積書を作成する/見積書を顧客に送る/見積の返答を確認する |
| 請求業務 | 請求金額を集計する/請求書を発行する/請求書を郵送する |
| 在庫管理 | 入庫を記録する/在庫数を数える/発注点を確認して発注する |
| 日報 | 現場で日報を書く/日報を回収する/日報を集計表に転記する |
動詞にすると、自動的に「1回で終わる単位」になります。名詞のままだと、そこに何行分の作業が入っているか誰にも分かりません。
書き出し用の表のひな形(12列)
この表がこの本の中心です。Excel でも Google スプレッドシートでも構いません。列はこの12本、この順番にしてください。
| # | 列名 | 書くこと | 記入例 |
|---|---|---|---|
| 1 | 番号 | 流れの順に通し番号 | 07 |
| 2 | 業務名 | 「◯◯を◯◯する」 | 注文内容を販売管理に登録する |
| 3 | 始まり | 何をきっかけに始まるか | 営業から注文書のPDFがメールで届く |
| 4 | 終わり | 終わったと言える状態 | 販売管理に受注番号が採番される |
| 5 | 担当 | 部門・役割・人数(氏名は書かない) | 業務課 事務 2名 |
| 6 | 頻度 | 1日◯回/週◯回/月◯回 | 1日 平均8回 |
| 7 | 1回の件数 | 1回で何件扱うか | 1回1件 |
| 8 | 入れ物 | 紙/Excel/メール/基幹/人の頭(複数可) | メール+基幹 |
| 9 | 前から受け取るもの | 何を、どの形で | 注文書PDF(様式は顧客ごとにばらばら) |
| 10 | 次へ渡すもの | 何を、どの形で | 出荷指示書(紙・倉庫の棚に置く) |
| 11 | 転記 | 同じ内容を別の入れ物に書き写す回数 | 1回(PDF→基幹の手入力) |
| 12 | 引っかかること | 困っている・止まる・やり直す(1行) | 品番の表記ゆれで、月に数回問い合わせが要る |
9列と10列が、この表の肝です。 ここを持つことで、行と行のあいだ(受け渡し)が表の中に現れます。9列に書いたものと、前の行の10列に書いたものが一致しないなら、そこで何かが起きています(形が変わっている=転記、または待ちが発生している)。
改善案は12列目に書かないでください。 聞き取り中に必ず「こうすればいいのに」が出ます。捨てずに、表の右端に13列目「気づき(改善案の置き場)」を作って逃がします。選ぶのは8章です。
kintoneの教科書の8列との違い
kintoneの教科書 4章にも棚卸しの表(8列)があります。あちらはkintoneに載せる前提で、最初の1アプリを選ぶための列(業務名・頻度・人数・入れ物・転記・紙・変わりやすさ・困りごと)です。
この本の12列は、道具を決める前に使うので、受け渡し(9・10列)と始まり・終わり(3・4列)を別に持ちます。すでにkintoneを入れると決めている会社は、この12列で書き出したあと、kintone4章の点数表に渡してください。 列は上位互換なので、書き直しは要りません。
聞き取りは1人30〜60分・5つの質問
書く人が現場に出向いて聞き取ります(1章)。本人に書かせないでください。 本人が書くと、毎日やっていることほど省略されます。
| 順 | 質問 | 埋まる列 |
|---|---|---|
| 1 | 「昨日の朝から順に、何をしましたか」 | 2・3・4・5 |
| 2 | 「それは誰から、何で受け取りますか」「終わったら誰に、何で渡しますか」 | 9・10 |
| 3 | 「それは1日に何回ありますか。1回に何件ですか」 | 6・7 |
| 4 | 「その内容は、他のどこかにも書いていますか」 | 8・11 |
| 5 | 「その作業で、止まったりやり直したりするのはどんなときですか」 | 12 |
1問目を「どんな業務がありますか」にしないでください。 抽象的な答え(「受注処理と顧客対応です」)しか返りません。「昨日の朝から順に」と時系列で聞くと、具体的な作業が出ます。
繁忙日と平常日で違う場合は、「昨日」と「先月の一番忙しかった日」の2回聞きます。
書かれにくい業務を引き出す3つの追加質問
聞き取りの終わりに、必ずこの3つを足してください。ここで出る業務が、6章のムダの本体です。
| 質問 | 出てくるもの |
|---|---|
| 「探すのに時間がかかるものは何ですか」 | 資料・過去のやり取り・担当者の在席確認 |
| 「待っているのはどこですか」 | 承認待ち・返答待ち・他部門の処理待ち |
| 「やり直しになるのはどんなときですか」 | 記入漏れの差し戻し・仕様変更・伝達ミス |
この3つは、本人が「業務」だと思っていないので、1〜5の質問では出てきません。出たら、それぞれ1行として表に足します。 「◯◯を探す」「◯◯の承認を待つ」「◯◯を作り直す」——動詞で書けば、ちゃんと行になります。
行数の目安と、終わりの判断
| 対象 | 行数の目安 | 多すぎるとき | 少なすぎるとき |
|---|---|---|---|
| 1本の流れ(2〜4部門) | 25〜50行 | 粒度が細かい。1回15分未満の行を前後とまとめる | 粒度が粗い。担当が変わる場所で割れていない |
| 定期業務の別表 | 10〜15行 | 月次の中の細かい作業を書いている | 年次のものが抜けている |
60行を超えたら、まず粒度を疑ってください。 対象が広すぎる場合もありますが(2章)、多くは「Excelを開く」「メールを送る」のような作業レベルが混ざっています。
書き終わりの判断は3つです。
- 3列(始まり)と、1つ前の行の4列(終わり)がつながっているか。 つながらない場所があるなら、行が抜けています
- 10列(次へ渡すもの)の行き先が、表の中のどこかにあるか。 無いなら、そこで流れが外に出ています(対象外なら○、書き忘れなら×)
- 担当の欄に、対象人数の全員が1回以上出ているか。 出ていない人がいるなら、その人の業務が丸ごと抜けています
空欄は推測で埋めない
書けない列は、空欄のまま残してください。 これが棚卸しの唯一のコツです。
空欄は「誰も数えたことがない」という事実そのものです。推測で埋めると、その数字が独り歩きして、あとで効果の計算が狂います。4章で数える対象は、この空欄です。
| 空欄の列 | 意味 | 次にやること |
|---|---|---|
| 6・7(頻度・件数) | 誰も数えていない | 4章で、実データから数える |
| 11(転記) | 転記だと思われていない | 8列(入れ物)が2つ以上あるなら、ほぼ転記がある。再確認する |
| 9・10(受け渡し) | 相手が誰か本人も知らない | 相手側に聞く。ここが食い違うのはよくある |
| 12(引っかかること) | 本当に困っていない、または諦めている | 追加質問3つ(探す・待つ・やり直す)をもう一度する |
とくに9列と10列の食い違いは重要です。「営業はメールで送ったつもり、事務は共有フォルダを見ている」のようなずれは、両方に聞いて初めて分かります。
よくある間違いを5つ
「現場に一覧の様式を配って、各自で記入してもらう」 ——毎日やっている作業ほど書かれません。探す・待つ・やり直すは、まず書かれません。直し方:書く人が出向いて聞く。1人30〜60分。時系列で聞く。
「業務名を『◯◯管理』で書く」 ——1行の中に何作業入っているか分からなくなり、頻度も件数も書けなくなります。直し方:全部の行を動詞で終える。名詞止めの行はその場で割る。
「大事な業務は細かく、そうでない業務は粗く書く」 ——重要度で粒度を変えると、表の行が比べられなくなります。重要度は7章で点数として別に付けます。直し方:粒度は3つのテストで機械的にそろえる。重要度は列にしない。
「フロー図を先に描いて、そこから表に起こす」 ——図は形を整える作業に時間を取られ、しかも数量が入りません。直し方:表が先、図は後(5章)。図は表を現場に確認してもらうための道具。
「分からない欄を『たぶん月10件くらい』で埋める」 ——その数字が計画に使われ、効果の見込みが最初から狂います。直し方:空欄で出す。空欄の数は、次に何を数えるかのリストになる。
この章の出口
この章を終えたとき、手元にあるべきものは3つです。
- 業務一覧表(1本の流れで25〜50行・12列)
- 定期業務の別表(10〜15行)
- 空欄の一覧(次に何を数えるかのリストになっている)
業務が行になりました。しかし、いまの表には数字が入っていない列があります。しかも、入っている数字の多くは本人の体感です。体感の数字で投資を決めると外します。 何を、どこから数えるかを決めるのが次の章です。
この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)
点検リスト:書き出しの粒度(12項目)
一覧表ができたと思った時点で、数える作業(4章)に入る前に付けます。
| # | チェック項目 | ○の条件 |
|---|---|---|
| 1 | すべての行の業務名が動詞で終わっているか | 名詞止めの行が0 |
| 2 | 各行の担当が1つの役割に決まっているか | 途中で人が変わる行が0 |
| 3 | 各行に「始まり」と「終わり」が書いてあるか | 空欄が0 |
| 4 | 行と行が、始まりと終わりでつながっているか | つながらない箇所を確認し、抜けを足した |
| 5 | 1回15分未満の行を、前後とまとめたか | 数分で終わる作業が単独で1行になっていない |
| 6 | 1回2時間を超える行を、割ったか | 「日による」としか言えない行が0 |
| 7 | 承認・確認・回覧が、独立した行になっているか | 待ちが発生する場所が表に現れている |
| 8 | 「前から受け取るもの」「次へ渡すもの」が全行に書いてあるか | 空欄が0(対象外へ出る行は「対象外」と書く) |
| 9 | 探す・待つ・やり直すを、全員に質問したか | 3つの質問を全員にした |
| 10 | 対象人数の全員が、担当の欄に1回以上出ているか | 業務が1行も書かれていない人がいない |
| 11 | 改善案を12列目に混ぜず、別列に逃がしたか | 「気づき」列がある |
| 12 | 分からない欄を推測で埋めていないか | 空欄のまま残っている(埋めた形跡がない) |
合格ライン=12項目中9つ以上。ただし 1・2・8 のどれかが×なら、数える作業に進まない。
- 1が×:名詞止めの行が残っていると、頻度も件数も付けられません。4章が丸ごと進みません
- 2が×:担当が変わる行は、複数の業務が1行に潰れています。受け渡しが消え、この本の意味がなくなります
- 8が×:受け渡しが空欄だと、6章でムダを見つける材料が無くなります
12番(推測で埋めない)は合格ラインに含めますが、×だったときは埋めた欄を空欄に戻してください。 消すのは気が引けますが、根拠のない数字を残すほうが危険です。
更新日 2018年10月20日
