株式会社COTSUBU

CHAPTER 04

業務の工数の数え方|頻度・件数・やり直し

この章で分かること

  • 数える4つの数量と、それぞれの出どころ(どこから取れば実データになるか)
  • 自己申告の時間を順位付けに使ってはいけない理由と、時間の正しい使い道
  • 数えられないものを1週間で数える方法(正の字)と、効果を「手数」で表す掛け算の型
この章の目次(9)
  1. 1数えるのは4つ
  2. 2時間を信じてはいけない3つの理由
  3. 3実データから数える(まずこちら)
  4. 4数えられないものは、1週間だけ数える
  5. 5やり直しと待ちの数え方
  6. 6効果は「時間」ではなく「手数」で言う
  7. 7数字の丸め方と、書いてはいけない数字
  8. 8よくある間違いを5つ
  9. 9この章の出口

数えるのは4つだけです。頻度・件数・触る人数・やり直しの回数。 「この作業に月20時間かかっています」という申告は、ほとんどの場合に体感であって実測ではありません。体感の時間を足し合わせた表は、合計すると所定労働時間を超え、経営会議で一度で信用を失います。 この章は、実データから数えられるものを数え、数えられないものだけを1週間の実測で補い、効果を「手数」で表すための章です。

この章で分かること

  • 数える4つの数量と、それぞれの出どころ(どこから取れば実データになるか)
  • 自己申告の時間を順位付けに使ってはいけない理由と、時間の正しい使い道
  • 数えられないものを1週間で数える方法(正の字)と、効果を「手数」で表す掛け算の型

数えるのは4つ

3章の表の6・7・11列と、6章で使う数字です。これ以外を増やさないでください。 列が増えるほど空欄が増え、空欄が増えるほど推測が混ざります。

数える目的を先に確認しておきます。棚卸しで数字を取るのは、実態を精密に記述するためではありません。7章で着手の順番を決めるためです。順番さえ付けばよいので、必要なのは絶対値の正確さではなく、業務どうしを同じ物差しで比べられることです。この違いを押さえておくと、どこまで手間をかけるべきかが判断できます。

だから4つに絞っています。数量の種類を増やすと、集める手間が増えるだけでなく、業務によって埋まる欄と埋まらない欄がばらつきます。ばらついた表では比較ができません。全業務で同じ4つが埋まっている表のほうが、業務ごとに10個の数字が入った歯抜けの表より、はるかに使えます。

もうひとつ、4つとも「聞かなくても数えられる可能性がある」という共通点があります。頻度も件数も人数もやり直しも、会社のどこかに記録が残っていることが多い数字です。時間だけは記録が残らないので、聞くしかありません。聞くしかない数字を中心に据えると、棚卸しは体感の集計になります。

数量 何を数えるか 何に効くか
頻度 その業務が発生する回数(1日◯回/週◯回/月◯回) 改善の効果は回数に比例する。最重要
件数 1回あたりに扱う件数(1回1件か、1回50件か) 同じ「1日1回」でも、扱う件数で重さが違う
触る人数 その業務に関わる人の実数 1人しか触らない業務は、改善しても社内に広がらない
やり直しの回数 差し戻し・訂正・再発行・問い合わせの回数 最も効果が大きいのにほぼ数えられていない(6章)

この表は、右端の列から読んでください。「何に効くか」が、その数字を取る理由です。理由が分からないまま数えさせられる現場は協力しません。数を頼むときに、この右端の列をそのまま説明に使ってください。「やり直しの回数を数えたいのは、それが一番減らせる作業だからです」と言えると、現場の反応が変わります。

4つのうち優先順位を付けるなら、頻度とやり直しです。この2つが埋まっていれば、7章の並べ替えはおおむねできます。件数と人数は、同じくらいの頻度の業務が並んだときの決め手として効きます。時間が足りないときは、全業務の頻度とやり直しを埋めることを優先し、件数と人数は上位に来そうな業務だけに絞って構いません。

4つ目が抜けている棚卸しが多すぎます。やり直しは、本来なら発生しなかった作業です。ここを減らすのは、業務そのものを速くするより効きます。

時間を信じてはいけない3つの理由

「その作業、どれくらいかかりますか」と聞けば、必ず答えは返ってきます。しかし、その数字を順位付けに使わないでください。

理由 何が起きるか
体感は丸まる 「30分くらい」「1時間くらい」に集まり、実測との差が出る。しかも人によって丸め方が違う
一番つらい日が基準になる 平常日ではなく、繁忙期の記憶で答える。改善の見込みが過大になる
人によって基準が違う 自分の仕事を短く言う人と、長く言う人がいる。同じ作業でも申告が数倍違う

決定的なのは3つ目です。申告時間で順位を付けると、「長めに言う人の業務」が上位に来ます。 これは業務の重さではなく、性格の差です。棚卸しを数でやる意味がなくなります。

たとえば、従業員40名ほどの卸売の会社で、各部門に作業時間を申告してもらい、合計の大きい順に着手の順番を決めたとします。上位に並ぶのが、ある1つの部門の業務ばかりになることがあります。その部門だけが特別に忙しいとは限りません。その部門の管理職が、部下の負荷を会社に伝えたいという善意から、どの業務も長めに申告している、ということが起こりえます。

問題は、それが誰にも見抜けないことです。申告値には根拠が無いので、長いとも短いとも言えません。すると、他の部門は「うちの業務は軽いと判定された」と受け取り、棚卸しへの協力が止まります。着手した1本目も、実際に数えてみると手数が少なく、改善の効果がほとんど出ません。何か月分もの労力が、順位付けの入口の選択で無駄になります。

この事故が厄介なのは、悪意が無い点です。誰も嘘をついていません。物差しが人によって違うだけです。だから、注意喚起では防げません。物差しそのものを、人の記憶に依存しないものに取り替えるしかありません。それがこの章の主張です。

それでも時間を聞く価値はあります。 ただし用途を限定してください。

時間の使い方 可否
着手順を決める材料にする(7章) ×。回数・件数・やり直しで決める
経営に効果を説明する金額の根拠にする ×。実測したものだけ使う
現場との会話の入口にする(「1時間もかかるんですね、どこで止まりますか」) ○。最も価値のある使い方
実測の候補を絞る(申告が長い上位5業務だけ実測する) ○

実データから数える(まずこちら)

聞かずに数えられるものは、聞かないで数えてください。会社の中には、すでに数えられる形で残っている記録があります。

数えたいもの 出どころの例 注意
受注・出荷・請求の件数 販売管理・会計の伝票件数 期間をそろえる(直近3か月)
見積の作成件数 見積番号の採番数 失注分を除かない(作った回数が知りたい)
問い合わせの件数 フォームの送信数・メールの受信数・電話の着信履歴 迷惑メール・社内メールを除く
承認の回数と待ち時間 ワークフローの承認日時、メールの往復日時 申請日時と承認日時の差が待ち時間
紙の枚数 複合機のカウンタ(部署別・月別に出せることが多い) 印刷と複写を分ける
ファイルの更新回数 共有フォルダのファイル更新日時・版数 「◯◯_最新_v3_修正.xlsx」の数え方は後述
差し戻し・訂正の件数 赤伝・訂正伝票・再発行の件数、差し戻しメール ここが最も見つけにくい
業務の所要日数 受付日と完了日の差(伝票の日付) 稼働日で数える

この表は、上から順に当たる表ではありません。自社の業務一覧表を見て、数量の欄が空いている行から逆に引いてください。「受注件数が要る」と思ったら1行目、「差し戻しの回数が要る」と思ったら7行目、という引き方です。全部の出どころに当たる必要はありません。

出どころを探す時間は、1つにつき15分を上限にしてください。15分探して見つからない数字は、記録として残っていないか、取り出すのに人手が要る数字です。そういう数字は、実データを諦めて1週間の実測に回すほうが早く終わります。探し続けるほど、棚卸し全体が長引き、1章で決めた時間の上限を超えます。

複合機のカウンタは見落とされがちです。 多くの機種で、部署別・月別の枚数が出せます。「紙が多い」という実感を、その日のうちに数字にできます。

同じく、申請日時と承認日時の差は、ほぼどの承認の仕組みにも記録が残っています。待ち時間は体感だと「いつも遅い」としか言えませんが、記録なら日数で出ます。

数えられないものは、1週間だけ数える

実データが無いものは、1週間だけ、正の字を付けて数えます。 これが最も確実で、最も嫌がられない方法です。

やること 決めごと
期間 1週間(5営業日)。繁忙の山と谷に当たらない普通の週を選ぶ
対象 数えたい業務だけ。3〜5種類まで。全部を数えさせない
記録の仕方 机に紙を1枚。起きたら線を1本引く。時間は書かない
集計 書く人が金曜の夕方に回収して合計する

紙のひな形は次の形で足ります。

数えるもの 月 火 水 木 金 合計
注文内容の問い合わせ(顧客へ確認の電話・メール) 正 下 正一
注文書の記載不備による差し戻し 一 二
「あの資料どこ?」と探した回数(5分以上) 正正 正 下 正
同じ数字を2か所目に入力した回数

「時間は書かない」を徹底してください。 時間を書かせた瞬間に、現場は「測られている」と感じ、記録が止まります。線を1本引くだけなら続きます。

1週間の結果は、そのまま月次・年次に引き伸ばして構いません(5営業日 × 4.3 ≒ 1か月、× 52 ≒ 1年)。ただし、繁忙期に当たった週かどうかを必ず記録してください。 当たっていたなら、その旨を表に書き添えます。

やり直しと待ちの数え方

この2つは、6章のムダの本体です。数え方を決めておきます。

数えるもの 数え方 どこから取るか
差し戻し 1回突き返されたら1 承認ログ・差し戻しメール・訂正伝票
訂正・再発行 発行し直した件数 赤伝・訂正版の発行番号
確認の往復 1往復を1 メールのスレッド数、電話の発信履歴、正の字
待ち時間 渡した日時と、次の人が着手した日時の差 承認ログ・伝票の日付・メールの時刻
探す時間 5分以上探したら1回として数える(時間ではなく回数) 正の字
二重入力 同じ内容を2か所目に入れたら1 3章の表の8列(入れ物)が2つ以上の行

「探した時間」ではなく「探した回数」を数えてください。 時間は思い出せませんが、「今日も探したか」は覚えています。回数のほうが、はるかに正確に取れます。

差し戻しの率は、分母を忘れずに書きます。「月に12件差し戻し」だけでは重さが分かりません。「月120件中12件」なら1割です。分母(総件数)は実データから取れます。

効果は「時間」ではなく「手数」で言う

改善の効果を「月◯時間の削減」で出すと、必ず「本当にその時間が浮くのか」で揉めます。浮いた時間は他の仕事に吸われるので、証明できません。

代わりに「手数」で言います。

年間の手数 = 発生回数(年) × 1回あたりの手数

ここでいう手数は、打つ・書く・送る・開く・確認するの回数です。

業務 発生回数(年) 1回の手数 年間の手数
注文書を見て販売管理に入力する 月160件 × 12 = 1,920 入力12項目 23,040項目
同じ内容をExcelの出荷予定表にも入れる 1,920 入力5項目 9,600項目
品番の表記ゆれを顧客に確認する 月10件 × 12 = 120 メール往復2回 240往復
記載不備で注文書を差し戻す 月8件 × 12 = 96 往復2回+再入力 96件の再作業

※ この表は記入例です。数字は各社で実際に数えたものを入れてください。

この表の読み方は、行どうしを比べることです。1行ずつ見ても「多いのか少ないのか」は分かりません。並べて初めて、2行目の9,600項目が1行目の23,040項目に次ぐ重さであること、そして2行目は二重入力なので丸ごと消せる可能性があることが見えます。手数の絶対値に意味があるのではなく、行の間の差に意味があります。

掛け算の右側——1回あたりの手数——は、細かく数えなくて構いません。入力項目なら欄の数を数えればよく、メールなら往復の回数です。ここで小数点以下の精度を求めると、数える作業が止まります。桁が合っていれば、順位は動きません。

手数は、時間と違って反論されません。 「同じ数字を年間9,600回、2か所目に打っている」は事実であり、感覚の差が入りません。そして、二重入力をやめれば9,600回が0になることも、誰にでも分かります。

時間に換算したい場合は、実測した業務だけにしてください。実測の仕方は次のとおりです。

実測のルール 中身
対象 申告時間が長い上位3〜5業務だけ
方法 横で見て、3回計る(ストップウォッチ。本人に計らせない)
採用する値 3回の中央値(平均ではない。1回だけ極端に長い回があるため)
記録 「実測」と明記する。申告値と並べて残す
除くもの 割り込み・雑談・探し物の時間は別に記録する(それ自体がムダの証拠になる)

本人に計らせないでください。 計っていることを意識すると速くなり、実態より短い数字が出ます。

数字の丸め方と、書いてはいけない数字

してよいこと してはいけないこと
「月およそ160件」と桁と概数で書く 「月163.4件」と、根拠のない精度で書く
「直近3か月の平均」と期間を明記する 期間を書かずに数字だけ書く
実測3回の中央値を「実測」と明記する 申告値を実測のように書く
数えていない欄を空欄にする 「たぶん◯件」で埋める
「1週間の実測を年換算」と書く 年換算であることを隠す
同業他社の話は書かない 「一般的に◯%の企業は」と書く

最後の行は、この本の全体を通した決めごとです。出どころの無い相場や統計を棚卸しの資料に書き込むと、そこだけ質問され、表全体の信用が落ちます。 自社で数えた数字だけを載せてください。

よくある間違いを5つ

「全員に1か月の作業時間記録を付けてもらう」 ——3日で記録が止まり、残ったデータは繁忙日に偏ります。しかも現場は「監視されている」と受け取ります。直し方:実データから取れるものは取る。取れないものだけ、1週間・3〜5種類・正の字で数える。

「申告された時間を合計して、削減見込みを出す」 ——合計が所定労働時間を超え、その1点を突かれて表全体が信用されなくなります。直し方:順位付けは回数・件数・やり直しで行う。時間は実測したものだけを添える。

「やり直しは例外なので数えない」 ——最も減らせる作業を、最初から対象外にしています。直し方:差し戻し・訂正・再発行・確認の往復を、分母(総件数)とセットで数える。

「繁忙期に測ったほうが実態に近い」 ——繁忙期の数字で計画を作ると、投資の見込みが過大になり、あとで「思ったほど効果が出なかった」になります。直し方:普通の週で数え、繁忙期は「◯倍になる」と別に書く。

「数字が取れないので、だいたいで埋めた」 ——その数字が計画・見積・稟議に乗り、誰も出どころを説明できなくなります。直し方:空欄で出す。空欄のままでも7章の並べ替えはできる(数えた業務が上位に来るだけ)。

この章の出口

この章を終えたとき、手元にあるべきものは3つです。

  1. 数量の入った業務一覧表(頻度・件数・人数・やり直しが埋まっている)
  2. やり直しと待ちの記録(件数と分母、待ち日数)
  3. 年間の手数(主要な業務について、回数 × 1回の手数)

数字が入りました。次は、この表を関係者が見て指を差せる形にします。指を差してもらうと、表には現れなかった食い違い(「そんなの受け取っていない」「それはもうやめました」)が出ます。清書したフロー図では、この指差しが起きません。

次の章へ:5章 業務フローの書き方|清書しない

この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)

点検リスト:数え方(12項目)

一覧表の数量を埋め終えた時点、ムダを探す(6章)前に付けます。

# チェック項目 ○の条件
1 頻度が、全行の8割以上で埋まっているか 空欄が2割以内
2 件数(1回あたり)が、頻度と別に書いてあるか 「1日1回・1回50件」のように分けて書いてある
3 数字の期間がそろっているか 全部が直近3か月(または直近12か月)で統一されている
4 実データから取れる数字を、実データから取ったか 伝票件数・複合機のカウンタ・承認ログ等を確認した
5 やり直し(差し戻し・訂正・再発行)を数えたか 件数と分母(総件数)の両方がある
6 確認の往復回数を数えたか メール・電話の往復が回数で入っている
7 待ち時間を日数で出したか 渡した日時と着手日時の差が、主要な受け渡しで出ている
8 探す作業を「回数」で数えたか 時間ではなく回数で記録した
9 申告時間を順位付けに使っていないか 順位は回数・件数・やり直しで付いている
10 実測した業務は「実測」と明記してあるか 実測値と申告値が区別できる
11 正の字で数えた期間と、繁忙期かどうかを記録したか 期間と繁忙の有無が表に書いてある
12 出どころの無い相場・統計を書いていないか 他社比較・業界平均の類が1つも無い

合格ライン=12項目中9つ以上。ただし 3・5・9 のどれかが×なら、ムダの分析に進まない。

  • 3が×:期間がそろっていない数字は足せません。合計した瞬間に意味を失います
  • 5が×:やり直しを数えていない棚卸しは、一番大きい削減先を見落とします
  • 9が×:申告時間で順位を付けると、業務の重さではなく申告の癖で順位が決まります

1番(頻度8割)が×の場合は、空欄の行を7章で下位に置くか、もう1週間かけて数えるかを選びます。空欄のまま上位に置くことだけはしないでください。

読んでも決めきれないところは、一緒に決めます

30分の相談は無料です。一覧表の作成から、着手順の決定まで伴走します。引き受けられる範囲は業務の棚卸しにまとめています。

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更新日 2018年10月20日