CHAPTER 07
広告の自動入札と予算配分の決め方
この章で分かること
- 自動入札を使ってよい条件と、使ってはいけない状態(判断の軸は「賢さ」ではなく件数)
- 目標値(目標CPA・目標ROAS)を誰が、いくらに置くか。目標値は媒体ではなく事業側が決める理由
- 予算をどこから引き上げ、どこに寄せるか。増やすときの刻み幅と、触らない期間の決め方
この章の目次(8)
- 1入札で決まるのは「いくらまで出すか」だけ
- 2手動と自動、どちらを使うか
- 3目標値は誰が決めるのか
- 4学習期間に触らない
- 5予算配分:引き上げる先と、寄せる先
- 6季節と競合で数字は動く
- 7よくある間違いを5つ
- 8この章の出口
入札とは、1回の表示機会にいくらまで出すかを決める作業です。今はそのほとんどを媒体の自動入札に任せられますが、任せてよい条件があります。 条件は1つだけ、成果件数が足りていることです。件数が足りないまま自動入札に任せると、媒体は何を増やせばよいか学べず、単価が高いまま安定しません。 この章は、手動と自動の分かれ目を決め、目標値を許容CPAから置き、学習中に触らない取り決めを作り、10項目の点検リストで入札と予算配分の合否を出すための章です。
この章で分かること
- 自動入札を使ってよい条件と、使ってはいけない状態(判断の軸は「賢さ」ではなく件数)
- 目標値(目標CPA・目標ROAS)を誰が、いくらに置くか。目標値は媒体ではなく事業側が決める理由
- 予算をどこから引き上げ、どこに寄せるか。増やすときの刻み幅と、触らない期間の決め方
入札で決まるのは「いくらまで出すか」だけ
1章で書いたとおり、広告の順番は毎回のオークションで決まります。入札額だけで決まるわけではなく、広告の品質(クリックされやすさ、広告と着地先の関連性など)が組み合わされると媒体は公表しています。 つまり入札の設定でできることは「いくらまで出すか」を決めるところまでで、その先(クリックされるか、問い合わせるか)は広告文(8章)と受け皿(10章)の領域です。
ここを混ぜると、入札をいじり続けて何も変わらない、という時間の使い方になります。入札は、すでに効いているものへ配分を寄せる仕組みであって、効かないものを効くようにする仕組みではありません。
| 入札の設定で動くもの | 入札の設定では動かないもの |
|---|---|
| 表示される回数と位置 | 広告文の良し悪し |
| 1クリックあたりの支払額 | 着地先で離脱するかどうか |
| 予算をどの先に寄せるか | 検索されていない語が検索されるようになること |
| 成果の出やすい人・時間帯への寄せ方 | 問い合わせに返信する速さ |
2章の点検で「入札は最後に触る」としているのは、このためです。除外(6章)と配分を直すと前提が変わり、入札の評価をやり直すことになります。
手動と自動、どちらを使うか
いま多くの媒体では、自動入札が既定になりつつあります。ただし自動入札は「データを食べて学ぶ仕組み」なので、食べるデータが無ければ働きません。 判断の軸は好みではなく、次の2つです。
| 軸 | 自動入札に向く | 手動(または上限単価の管理)に向く |
|---|---|---|
| 成果件数 | 一定量が安定して出ている | 月に数件しか出ていない |
| 計測の状態 | 3章の点検で1・2・3が○ | 計測が怪しい、重複がある |
計測が正しくないアカウントで自動入札を使うのは、最も避けたい組み合わせです。 媒体は「成果」として渡された数字を正しいと信じて配分するため、間違った成果を増やす方向へ全力で最適化します。 例えばページの表示を成果に登録していれば、問い合わせない人を集める方向に寄っていきます。
「何件あれば自動入札を使ってよいか」
媒体は、入札方式ごとに必要な成果件数の目安を公式ヘルプで示しています。ただしこの目安は変わりますし、方式の名称も統廃合されます。 この本では数値を書き写しません。使う前に、その媒体の公式ヘルプで最新の記載を確認し、確認した日付を記録してください。(探す言葉:「自動入札 入札戦略 一覧」「入札戦略 必要なコンバージョン数」「学習期間」)
そのうえで、当社の決めごとを1つ置いています。公式ヘルプの目安に届いていない場合は、入札方式をいじる前に、先に件数が増える作業(除外の精査・予算の集中・着地先の修正)をやります。 件数が足りない状態で方式だけを変えても、単価が上がるか、配信が細るかのどちらかになることがほとんどです。
目標値は誰が決めるのか
目標CPA(1件あたりいくらで取りたいか)や目標ROAS(広告費に対して何倍の売上を回収したいか)は、媒体が決める数字ではなく、事業側が決める数字です。
目標CPA ≦ 許容CPA(1章で計算した値 = 粗利 × 成約率 ÷ 3)
2章の工程6の合格ラインがこれです。設定してある目標額が許容CPAより高いアカウントは、うまくいっても赤字になります。設定の巧拙以前に、設計が赤字なのです。
目標ROASを使う場合も同じで、根拠は自社の粗利率です。
最低限の目標ROAS = 1 ÷ 粗利率
粗利率30%なら、広告費の3.3倍の売上が立って収支がとんとんです。実際には利益を残す必要があるので、ここに余裕を乗せます。「業界の平均ROASは◯倍」という数字は使いません。 粗利率が違えば分岐点も違うためで、他社の平均から自社の合否は判定できません。
目標値を動かすときの決めごと
| やること | 決めごと |
|---|---|
| 目標値を下げる(厳しくする) | 件数が溜まり、実績CPAが目標を安定して下回っている場合のみ |
| 目標値を上げる(緩める) | 配信量が明らかに細っていて、件数が増えない場合のみ |
| 変更の頻度 | 同じ設定を続けて評価できる期間を確保する。週ごとに動かさない |
| 記録 | 変えた日・変更前後の値・理由を1か所に残す(9章の変更履歴) |
目標値を毎週動かすのが、最も多い失敗です。 動かすたびに評価の前提が変わり、「この数字は、どの設定の結果なのか」が誰にも言えなくなります。
学習期間に触らない
設定を大きく変えたあと、媒体側の配信が安定するまでに時間がかかります。この期間の数字は、良くも悪くも振れます。 ここで焦って追加の変更を入れると、学習がやり直しになり、いつまでも安定しません。
必要な期間は媒体と方式で違い、変わります。必ず公式ヘルプで最新を確認してください。 そのうえで、当社の決めごとは次の形です。
| 決めごと | 中身 |
|---|---|
| 変更は1回につき1つ | 入札方式・目標値・予算を同時に変えない。同時に変えると原因が分からない |
| 変更したら評価期間を置く | 期間中は、配信停止に関わる異常(費用0・審査落ち・決済エラー)以外は触らない |
| 触ってよい日を先に決める | 「毎週月曜に検索語句だけ見る」のように、触る対象と日を決める(9章) |
| 件数が溜まるまで判断しない | 当社の決めごとは主要コンバージョン30件(1章) |
「触らない」は、サボりではなく手順です。 毎日触るほど良くなるように見えて、実際には評価不能な状態を作り続けているだけ、ということが起こります。
予算配分:引き上げる先と、寄せる先
入札より先に効くのが予算配分です。2章の工程5で出した2つの並び(費用の多い順・成果件数の多い順)を使います。
| 状態 | 見えていること | やること |
|---|---|---|
| 費用上位に、成果0の項目が入っている | お金が効かない先に流れている | 引き上げる。まず止めずに予算を下げ、影響を見る |
| 成果の出ている項目が、予算上限に張り付いている | 取りこぼし(機会損失)が出ている | 寄せる。引き上げた分を回す |
| 費用も成果も小さい項目が多数ある | 判断できるだけの費用が入っていない | 集約する。「試していない」と「効かない」は別 |
| 費用上位3と成果上位3が2つ以上重なっている | 配分は合格 | 触らない |
先に引き上げ、次に寄せる。 総額を増やさずに配分だけを直すと、その月のうちに件数が動くことがあります。増額の判断は、配分を直してからです。
予算を増やすときの刻み幅
効いているキャンペーンの予算を一気に倍にすると、2つのことが同時に起きます。①学習の前提が変わって配信が乱れる、②それまで表示していなかった層まで拾いに行き、単価が上がる。どちらも「増やしたのに効率が落ちた」に見えます。
当社の決めごととして、増額は一度に大きく動かさず、刻んで上げ、そのつど評価期間を置きます。 具体的な幅は商材と件数で変えますが、原則は次の2つです。
- 一度に倍にしない。 増やしたあとに悪化したとき、元の状態に戻す根拠が残らなくなります
- 増やす理由を先に書く。 「上限に張り付いていて、取りこぼしが出ているから」が増やす理由です。「今月は予算が余ったから」は理由になりません
減らすときも同じです。いきなり止めるのではなく、まず下げて影響を見る。 止めてしまうと、その項目のデータが増えなくなり、再開したときにまた学習から始まります。
季節と競合で数字は動く
同じ設定のまま、CPAが上下することがあります。多くは次の要因で、運用の巧拙ではありません。
| 要因 | 起きること | 対処 |
|---|---|---|
| 季節・繁閑 | 検索数と競合の出稿が増減する | 前年同月と比べる。前月比だけで判断しない |
| 競合の新規参入 | 同じ枠の取り合いが増え、単価が上がる | 単価ではなくCPAと件数で判断する |
| 自社の指名検索の増減 | 指名は単価が安いため、比率でCPAが動く | 指名を除いた数字で比べる(5章) |
| 商材・価格の変更 | 成約率が変わり、許容CPAが変わる | 許容CPAを計算し直す(1章) |
4つめが見落とされがちです。売るものや価格を変えたら、許容CPAも目標値も置き直します。 前の商材の数字のまま運用を続けると、判断の基準そのものがずれます。
よくある間違いを5つ
「自動入札にしたのに成果が増えない」 ——ほぼ件数不足です。月に数件しか成果が出ていない状態では、媒体は学習する材料を持ちません。方式を変えても、配信が細るか単価が上がるかのどちらかになります。 → 直し方:入札方式を触る前に、件数が増える作業を先にやる。除外の精査(6章)で無駄を止め、浮いた予算を成果の出ている先に寄せる。公式ヘルプの必要件数の目安に届いてから方式を検討する。
「目標CPAを低く設定すれば、安く取れる」 ——低すぎる目標を置くと、媒体は「その金額で取れる見込みの表示機会」しか拾わなくなり、配信量が落ちて件数が減ります。 単価は下がったが件数が半分、という状態になりがちです。 → 直し方:目標値は許容CPA以下、かつ直近の実績から極端に離れていない値に置く。下げるのは、実績が安定して目標を下回ってから。1回の変更幅を刻む。
「悪い週があったので、すぐ設定を戻した」 ——週単位の数字は振れます。3件が2件になっただけで33%の悪化に見えます。戻した結果、学習がやり直しになり、評価はさらに遠のきます。 → 直し方:何件たまったら判断するかを、変更する前に決めておく(当社は30件)。評価期間中は、配信停止に関わる異常以外は触らない。
「複数の設定を同時に変えた」 ——入札方式・目標値・予算・除外を同じ日に変えると、良くなっても悪くなっても原因が分かりません。変更の効果を学べないので、次の判断も勘になります。 → 直し方:1回につき1つ。 変えた日・内容・理由を1か所に記録する(9章)。急いで全部直したいときほど、順番に1つずつ。
「予算が余ったので月末に増やした」 ——月末の駆け込み増額は、学習の前提を変えたうえに、評価期間も取れません。翌月の数字まで乱れます。 → 直し方:増やす理由を「上限に張り付いていて取りこぼしがある」に限定する。 余った予算は、翌月の予算に組み込むか、受け皿の改善(10章)に回すほうが回収が早いことが多いです。
この章の出口
手元に残っているべきものは4つです。
- 入札方式と、それを選んだ理由(自動なら、必要件数の目安を確認した日付つき)
- 目標値の金額(許容CPA以下であることを突き合わせた記録)
- 触ってよい日・触らない期間の取り決め(9章の運用の型に組み込む)
- 予算の増減の刻み幅と、増やす理由の定義
この4つが書けていれば、入札の設定は「毎週なんとなく触るもの」から「決めた日に、決めた幅で、1つだけ動かすもの」に変わります。
自分で組むのが難しい場合、当社のリスティング広告運用は初回相談とアカウント診断が無料、初期構築20万円から、運用代行は月10万円から(広告費の20%または月10万円の高い方)です。広告費は当社を経由せず、御社から媒体へ直接お支払いいただきます(金額を上乗せする余地をなくすためです)。すべて税別です。
配分を直し、入札の前提を揃えたら、次は何を見せるかです。同じ入札設定でも、広告文と素材で結果は変わります。
この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)
点検リスト:入札と予算配分(10項目)
| # | チェック項目 | 合格の状態 |
|---|---|---|
| 1 | 入札方式を選んだ理由が言える | 自動を選んだなら、必要な成果件数が足りている根拠がある |
| 2 | 目標値が許容CPA以下に設定されている | 1章の計算値と突き合わせた |
| 3 | 学習に必要な成果件数の目安を公式ヘルプで確認した | 媒体の最新の記載を確認した日付がある |
| 4 | 学習中に設定を触らない取り決めがある | 触ってよい日と触らない日が決まっている |
| 5 | 設定変更を1回につき1つに絞っている | 同時に複数変えて原因が分からなくなっていない |
| 6 | 予算が上限に張り付いていないか確認した | 機会損失が出ているかを把握している |
| 7 | 成果の出ていない先から予算を引き上げた | 費用上位と成果上位のズレを直した |
| 8 | 予算の増減幅を決めている | 一度に倍にするような変更をしていない |
| 9 | 目標値を変えた日と理由を記録している | 変更履歴がある |
| 10 | 判断に足る件数が溜まるまで待つ基準がある | 「◯件たまるまで判断しない」が決まっている |
合格ライン=10項目中7つ以上。ただし 1・3 は必須です。 この2つが×の状態、つまり件数が足りているかを確かめないまま自動入札に任せている状態では、単価が高いまま安定せず、しかもその理由が設定なのか件数なのかを切り分けられません。点数に関係なく、先にここを確かめます。
2・9 が×なら今週中に直せます(計算と記録だけで、配信には触りません)。6・7 は×なら、その月のうちに件数が動く可能性がある項目です。
読んでも決めきれないところは、一緒に決めます
30分の相談は無料です。2章の点検を当社が代わりに回すこともできます(単発可)。引き受けられる範囲は広告アカウント診断にまとめています。
30分相談を予約する更新日 2018年10月20日
