株式会社COTSUBU

CHAPTER 04

自治体の調達|プロポーザル・仕様書の書き方

この章で分かること

  • 契約方式の選び方(「仕様が書けるか」の1軸で決まる)
  • 仕様書に入れる12行と、書いてはいけない3つ
  • 随意契約で必ず聞かれる3つと、分割発注の線引き
この章の目次(10)
  1. 1方式は大きく4つ
  2. 2選び方は「仕様が書けるか」の1軸
  3. 3随意契約で必ず聞かれる3つ
  4. 4分割発注の線引き
  5. 5仕様書に入れる12行
  6. 6仕様書に書いてはいけない3つ
  7. 7プロポーザルは「採点表を先に作る」
  8. 8検収を「見た」で終わらせない
  9. 9よくある間違いを5つ
  10. 10この章の出口

契約方式は、好みで選ぶものではありません。仕様書が書けるかどうかで、ほぼ自動的に決まります。 書けるなら入札、書けないならプロポーザル、小さくて急ぐなら随意契約。順番はこれだけです。 この章は、方式の選び方と、仕様書に必ず入れる12行、そして監査で必ず聞かれる3つに答えられる形を作るための章です。

この章で分かること

  • 契約方式の選び方(「仕様が書けるか」の1軸で決まる)
  • 仕様書に入れる12行と、書いてはいけない3つ
  • 随意契約で必ず聞かれる3つと、分割発注の線引き

この章は制度の解説ではありません。 契約方式の要件・限度額・手続きは、地方自治法と同法施行令、そして自庁の財務規則で決まっており、団体区分によって違います。書いてあるのは確認する場所と、確認するときの問いです。方式の可否は必ず契約担当に確認してください。

方式は大きく4つ

方式の選択が最初に来るのは、ここを間違えると後の全部がやり直しになるからです。仕様書の書き方も、評価のしかたも、検収の基準も、方式が決まってから作るものです。順番を逆にして、先に「こういうものを作りたい」を固めてから方式を探すと、その案件に合わない方式に無理やり押し込むことになります。

もうひとつ、時間の理由があります。自治体の調達は、方式によって決まるまでの期間が大きく違います。プロポーザルは要領づくりと審査体制の準備が要るので、年度内に間に合わせるつもりなら逆算の起点が変わります。3章で予算の暦を先に押さえたのは、この逆算をするためです。方式を後から変えると、その逆算がまるごと崩れます。

この章で書くのは、どの方式が優れているかではありません。自庁の案件がどの方式に当たるかを、自分で見分けられるようにすることです。判断そのものは契約担当が持っています。こちらが用意するのは、契約担当が判断できるだけの材料——つまり、仕様書が書けるかどうかの実地の確認です。

方式 どういうときに使うか 準備にかかる労力 決まるまで
少額随意契約 金額が財務規則の限度額内 小さい(見積の徴収) 最短
見積合わせ・オープンカウンター 少額で、複数から見積を取りたい 小さい 短い
プロポーザル(公募型・指名型) 仕様を固め切れない。提案の中身で選びたい 大きい(要領・評価基準・審査体制) 長い
競争入札(一般・指名) 仕様が固まっていて、価格で選べる 中〜大(仕様書) 中

限度額も、どの方式を使えるかも、団体の財務規則で決まります。 自庁の規則の「随意契約によることができる場合」と、金額の表を1度自分の目で見てください。ここを見ないまま「30万円なら随契でいける」と思い込むのが、最初の事故です(3章の点検6・7)。

選び方は「仕様が書けるか」の1軸

状態 選ぶ方式 理由
何を作るか、成果物が具体的に書ける 競争入札/見積合わせ 同じものを各社が見積もるので、価格で比べられる
課題は分かるが、解き方は各社で違う プロポーザル 提案の中身で選ぶ。価格だけでは選べない
小さく試したい。1業務だけ 少額随意契約 限度額内に収まるなら、最短で動ける
どうしてもその相手でなければならない 特命随意契約 理由の説明が最も重くなる。後述

この表は、4行を比べる表ではありません。自庁の案件がどの状態にあるかを1つ選んで、その行の方式を契約担当に持っていくための表です。複数の行に当てはまると感じたら、それは案件がまだ絞れていないということなので、方式を選ぶ前に2章の棚卸しに戻ってください。

判断に迷ったら、仕様書の下書きを書いてみてください。 成果物・数量・期限が書けなければ、入札には出せません。書けないまま入札にかけると、最低価格の相手が「仕様どおり」に作り、使えないものが納品されます。仕様が書けないのは能力不足ではなく、その案件がプロポーザル向きだというだけです。

よくあるのは、こういう形です。窓口の申請受付をデジタル化したい、という案件で、課題意識ははっきりしているものの、具体的にどんな画面で、どの項目を、どういう流れで扱うかは固まっていない。それでも入札にかける。準備の労力が小さく、決まるまでも早いからです。

落札した事業者は、仕様書に書いてあることを書いてあるとおりに作ります。そこに落ち度はありません。ただ、仕様書に「申請を受け付けられること」としか書かれておらず、現場が実際に使う順番も、紙の様式との対応も書かれていなければ、納品されたものは現場の手順と噛み合いません。追加の改修は別契約になり、その年度は使われないまま終わる、ということになりがちです。

この失敗は、事業者を替えても起きます。原因が仕様書の側にあるからです。逆に言えば、下書きを書いてみる作業には、方式を決める以上の価値があります。書けない箇所がそのまま、自庁がまだ決めていない箇所だからです。書けなければプロポーザルに回せばよく、書けたならそれがそのまま仕様書になります。どちらに転んでも損をしません。

入札とプロポーザルで最後まで迷ったら、プロポーザルを選んでください。仕様が固まっているのにプロポーザルにした場合の損失は、準備の手間が増えることだけです。固まっていないのに入札にした場合の損失は、使えないものを受け取って1年を失うことです。失敗したときの重さが釣り合っていません。

業務システムの場合、見積書の読み方と相手の選び方は、kintoneの教科書 3章(見積の読み方と開発会社の選び方)の見積書チェック10項目・開発会社の選定チェック8項目がそのまま使えます。この章では、自治体特有の部分だけを書きます。

随意契約で必ず聞かれる3つ

監査でも議会でも、聞かれることは決まっています。契約の前に、この3つの答えを文書で残してください。 後から作るものではありません。

聞かれること 答えの作り方 弱い答え
なぜ随意契約か 財務規則の該当条項を書く。金額/緊急/性質上競争に適さない、のどれか 「急いでいたため」だけ
なぜその相手か 実績・技術・地理的条件など、その相手でなければならない理由を具体的に書く 「以前から付き合いがある」
金額は妥当か 参考見積、他団体の実績、単価の内訳 「先方の提示額どおり」

2つめが最も弱くなりがちです。 「実績があるから」だけでは、他に実績のある事業者がいない理由になりません。当社が自治体に提案するときも、比較しやすい形で出すことを勧めています。たとえば「何を、何日で作った実績があるか」を各社に同じ質問で聞いてもらう。比較されて困る相手なら、そもそも選ばないほうが安全です。

分割発注の線引き

限度額に収めるために1つの仕事を割るのは、監査で最初に見られる場所です。ただし、「小さく発注すること」自体が禁じられているわけではありません。線はここにあります。

やってよい分け方 だめな分け方
業務ごとに成果物が独立している(Aだけ納品されても使える) 1つの成果物を工程で割る(設計だけ、開発だけ、で単体では使えない)
年度が違う(今年度はA、次年度はB) 同じ年度に、同じ相手に、同じ目的で繰り返し発注する
発注のたびに、やるかどうかを判断している 最初から全体の総額が決まっていて、形式的に割っている

当社が自治体向けに「1業務30万円」という単位を持っているのは、左側の条件を満たすためです。1業務=1つのアプリで、それ単体で使えます。 2業務目をやるかどうかは、1業務目を使ってから判断してもらいます。「3業務パック75万円」を選ぶ場合は、最初から3業務分の契約です。 分けるかまとめるかは、団体側が契約方式に合わせて選べます。

迷ったら契約担当に「この分け方は分割発注に当たるか」と先に聞いてください。 聞いた記録があること自体が、後の説明になります。

仕様書に入れる12行

業務システムの調達で、自治体の仕様書から抜けがちな12行です。技術の指定ではなく、後で揉める場所を先に埋めるためのものです。

# 書く内容 書かないとどうなるか
1 対象の業務と範囲(どの課の、どの作業か) 範囲が広がり、追加費用になる
2 成果物の一覧(アプリ/設定/手順書/研修) 手順書が付いてこない
3 職員が自分で変更できる範囲(項目の追加・一覧の並び替え等) すべて有償の改修依頼になる(7章)
4 データの所有と持ち出し(終了時にCSV等で全件出せること) 乗り換えられなくなる
5 ID・権限・契約の名義(自治体名義であること) 退職・契約終了でログインできない
6 扱う個人情報の範囲と取扱いの条件 委託先での取扱いが不明確になる(6章)
7 ネットワークの前提(どの区分で使うか。外部との通信の有無) 作った後に「その経路では使えない」が出る(5章)
8 引き継ぎと研修(何人に、何時間、何を) 担当の異動で止まる(9章)
9 検収の基準(何ができたら完了か) 検収が形式的になる
10 契約終了後の扱い(保守の範囲、データの返還、削除) 終わらせ方が決まっていない
11 成果物の権利(著作権の扱い、二次利用の範囲) 他の課で使い回せない
12 連絡と報告の頻度(定例の有無、報告の様式) 進捗が分からないまま年度末になる

この12行は、上から順に書いていく順番ではありません。仕様書の下書きができた段階で、抜けを見つけるための確認表として使ってください。使い方は、書き上げた下書きを開いて、12行を1つずつ探すだけです。見つからない行があれば、そこが抜けです。右の列には、抜けたときに何が起きるかが書いてあるので、急ぐ案件で全部は埋められないときの優先順位もここで付けられます。

12行のうち、事業者に聞かないと書けない行はほとんどありません。どの課のどの作業か、誰が何を触れるようにしたいか、終わったときに何が残っていてほしいか——全部、自庁の側が決めることです。事業者に「どう書けばいいですか」と聞いた時点で、その行は相手の都合のよい形に決まります。

3行目(職員が自分で変更できる範囲)は、この本で最も強く勧める1行です。ここが書かれていないと、項目を1つ増やすだけで見積が出てきます。7章で詳しく扱います。

11行目(権利)は、「全部譲渡」を一律に求めないほうがよい場合があります。 汎用の部品まで譲渡を求めると、対応できる事業者が減り、価格が上がります。必要なのはたいてい「自庁が自由に使い続けられること」であって、独占ではありません。自庁の契約担当・法規担当に、標準の契約条項を確認してください。

仕様書に書いてはいけない3つ

書いてはいけないもの なぜか どう書くか
特定の製品名だけを指定する 競争性が無いと指摘される 機能の要件で書き、「同等以上」とする。製品を特定する必要があるなら、その理由を別に残す
実現できない条件を並べる 応札が無い、または価格が跳ね上がる 「必須」と「望ましい」を分ける
曖昧な包括条項だけで済ませる 「その他必要な業務一式」で揉める 範囲外を明記する。追加は別契約とする

「同等以上」の扱いには注意が要ります。 同等かどうかを誰が判断するかを書いていないと、審査の段階で揉めます。判断する主体と、判断の基準(満たすべき機能の一覧)を仕様書に書いてください。

プロポーザルは「採点表を先に作る」

プロポーザルで最も多い失敗は、提案を見てから評価項目を決めることです。そうなると、選定の理由を後から説明できません。

順番は逆です。公募の前に、採点表を完成させます。

当社が神奈川県藤沢市で市営住宅の空き住戸の利活用をお手伝いしたとき、募集要項(対外向け)と事務要領(庁内向け)を分けて整備し、選定審査は5項目×20点=100点の採点シートの形で先に用意しました。システムの調達ではありませんが、公募の枠組みを作る手順は同じです。

先に決めること 中身
評価項目と配点 何を何点で見るか。合計が100点になる形
審査する人 誰が採点するか。外部の意見を入れるか
失格の条件 応募要件を満たさない場合の扱い
価格の扱い 価格を何点で見るか。価格だけで決めないなら、その理由
結果の公表 どこまで公表するか

評価項目には、この本の主題を1つ入れてください。 「納品後に職員が自分で変更できる範囲」と「引き継ぎ・研修の具体」です。ここを配点に入れると、提案の中身が変わります。逆に入れないと、どの社も作って渡すだけの提案を出してきます。 評価項目は、事業者の行動を決めます。

検収を「見た」で終わらせない

自治体の検収は、年度末に集中し、形式的になりがちです(3章)。契約の段階で、検収の基準を決めてください。

検収に必要なもの 中身
実際の業務データで1件通した テストデータではなく、現場の1件を最初から最後まで
成果物の一覧と突き合わせた アプリ・設定・手順書・研修の記録
ID・権限が自治体名義になっている 管理者のIDを自庁で持っている
職員が自分で1か所直してみた 項目を1つ足す等を、職員が自分の手で
残っている宿題の扱い 誰が、いつまでに、有償か無償か

4つめ(職員が自分で1か所直してみた)は、当社が自治体の納品で必ずやることです。渡された側が触れないものは、完成していません。 操作説明を聞いただけでは、触れるかどうかは分かりません。

よくある間違いを5つ

「仕様が書けないまま入札にかける」 ——最低価格の相手が「仕様どおり」に作り、使えないものが納品されます。悪いのは相手ではなく仕様書です。直し方:仕様書の下書きを書いてみて、成果物・数量・期限が書けなければプロポーザルにする。

「限度額に収めるために工程で割る」 ——設計だけ、開発だけ、と割ると、単体では使えず、分割発注を指摘されます。直し方:割るなら業務単位で割る。1つずつ独立して使えることを確認する。迷ったら契約担当に先に聞く。

「提案を見てから評価項目を決める」 ——選定の理由を後から説明できません。直し方:公募の前に採点表を完成させる。評価項目に「職員が自分で変更できる範囲」と「引き継ぎ・研修」を入れる。

「著作権を一律に全部譲渡させる」 ——対応できる事業者が減り、価格が上がります。必要なのは独占ではなく、自庁が使い続けられることです。直し方:法規担当に標準条項を確認する。必要な範囲(自庁での利用・改変・他課への展開)を具体的に書く。

「検収を画面を見て終える」 ——年度末に集中すると、検収が形式になります。直し方:契約時に検収の基準を5つ決める。実データで1件通す、職員が自分で1か所直す、を必ず入れる。

この章の出口

この章を終えたとき、手元に残っているべきものは3つです。

  1. 契約方式の判断(仕様書の下書きを書いたうえで決めた。随意契約なら3つの答えが文書にある)
  2. 仕様書の12行(特に「職員が自分で変更できる範囲」「名義」「検収の基準」)
  3. 12項目の○×(必須3項目がすべて○)

発注の形は決まりました。ここから先は、作ったものをどこに置くかの話です。自治体のネットワークは民間と違い、区分ごとに扱えるものが決まっています。ここを着手前に確認しないと、出来上がったものが使えない場所に置かれます。

次の章へ:5章 情報セキュリティポリシーと三層分離(LGWAN・インターネット接続系・クラウドサービスの扱い)

この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)

点検リスト:調達の設計(12項目)

公告・見積依頼を出す前に、契約担当と一緒に通します。

# チェック項目 合格ライン
1 自庁の財務規則で、使える方式と限度額を確認した 条文と金額の表を見た
2 方式を「仕様が書けるか」で選んだ 仕様書の下書きを書いてから決めた
3 随意契約の場合、3つの答えを文書にした なぜ随意か・なぜその相手か・金額の妥当性
4 分割発注になっていない 業務ごとに成果物が独立している。契約担当に確認した
5 仕様書に12行が入っている 抜けている行がない
6 職員が自分で変更できる範囲を仕様書に書いた どこまでを職員が触れるかが具体的
7 ID・権限・契約の名義を自治体名義と明記した 個人名義になっていない
8 ネットワークの前提を書いた どの区分で使うか、外部との通信の有無(5章)
9 個人情報の取扱いの条件を書いた 範囲・再委託の可否・終了時の扱い(6章)
10 特定製品の指定になっていない 機能要件で書き、必要なら理由を別に残した
11 プロポーザルの場合、採点表を公募前に完成させた 評価項目・配点・審査体制・失格条件
12 検収の基準を契約時に決めた 実データ1件・成果物一覧・名義・職員が1か所直す・残る宿題

合格ライン=12項目中10以上。ただし 4・6・12 のどれかが×なら発注しない。

  • 4が×:監査で最初に指摘される場所です。契約そのものをやり直すことになります
  • 6が×:納品後、項目を1つ足すたびに見積が出てきます。運用費が構築費を超えます
  • 12が×:検収が形式になり、使えないものを受け取ったまま年度が終わります

11はプロポーザル以外の場合、対象外として構いません。

読んでも決めきれないところは、一緒に決めます

30分の相談は無料です。役場に常駐して進めた実例をお見せします。引き受けられる範囲は自治体DX支援・地域活性化起業人にまとめています。

30分相談を予約する

更新日 2018年10月20日