CHAPTER 09
LINEのLIFF開発|標準機能では届かない部分
この章で分かること
- LIFFの仕組みと、LINEミニアプリとの違い(公式ドキュメントの範囲で)
- 要件の決め方(画面の数・扱うデータ・つなぐ先)と、作る前に決めておく4つのこと
- LIFFにしないほうがよい7つの場合と、10項目すべてが必須の着手前チェック
この章の目次(10)
- 1LIFFとは何か
- 2LIFFで何が増えるか
- 3LIFFとLINEミニアプリの違い
- 4標準で足りなくなる5つの兆候
- 5要件は「3つの数」で決まる
- 6作る前に決める4つ
- 7費用の考え方
- 8LIFFにしないほうがよい場合
- 9よくある誤解を3つだけ
- 10この章の出口
LIFFは、LINEアプリの中でWebの画面を開くための、LINEヤフーが公式に提供している仕組みです。外部サイトへのリンクと決定的に違うのは、ブラウザに出ないことと、開いている人が「どの友だちか」を取得できることの2点です。 この2点があるので、予約・会員証・マイページのように「その人に合わせて見せる」ものが、LINEの中で成立します。標準のフォームが入力を受けるための道具なら、LIFFは見せる・つなぐための道具です。 この章は、LIFFで何ができるかを公式の仕様の範囲で整理し、要件を3つの数(画面・データ・つなぐ先)で決め、10項目すべてが○になるまで作り始めないための章です。そして、LIFFにしないほうがよい場合を先に潰します。
この章で分かること
- LIFFの仕組みと、LINEミニアプリとの違い(公式ドキュメントの範囲で)
- 要件の決め方(画面の数・扱うデータ・つなぐ先)と、作る前に決めておく4つのこと
- LIFFにしないほうがよい7つの場合と、10項目すべてが必須の着手前チェック
LIFFとは何か
LIFF(LINE Front-end Framework)は、自分で用意したWebページを、LINEアプリの中で開くための仕組みです。技術的な詳細は LINE Developers のLIFFドキュメントにあります。ここでは、要件を決めるために知っておくべきことだけを書きます。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 何を用意するか | HTTPSで公開されたWebページ(自社でサーバーかホスティングを用意する) |
| どこに登録するか | LINE Developers のコンソールで、LINEログインチャネルにLIFFアプリを登録する。LIFF IDが発行される |
| どうやって開くか | 発行されたLIFF URLを、リッチメニュー・配信・トークのリンクから開く |
| どこで開くか | LINEアプリの中(LIFFブラウザ)。外部ブラウザでも開けるが、使える機能に違いがある |
| 画面の大きさ | 登録時に、Compact / Tall / Full の3種類から選ぶ |
サーバーが要るという点が、標準のフォームとの最大の実務上の違いです。作って終わりではなく、動かし続ける費用と責任が残ります。
LIFFのSDKでできること
LIFFのSDKを読み込むと、Webページの中からLINEの情報を扱えます。代表的なものは次のとおりです。機能ごとに、利用者の同意(スコープ)や、開いた場所による条件があります。 最新の条件は必ず公式ドキュメントで確認してください。
| できること | 何に使うか |
|---|---|
| ユーザーID・表示名・プロフィール画像の取得 | 開いている人がどの友だちかを特定する(この章の中心) |
| IDトークン/アクセストークンの取得 | サーバー側で本人を確かめる(後述) |
| 開いているトークにメッセージを送る | 申込の完了を、その場でトークに残す |
| 送り先を選んでメッセージを共有する | 紹介・シェアの導線 |
| 画面を閉じる | 完了後にトークへ戻す |
| LINE公式アカウントを友だち追加しているかの判定 | 未追加の人に追加を促す |
| QRコードの読み取り | 来店時の受付など(利用できる条件があるため要確認) |
「どの友だちか」を結びつけるために、最初に決める設定
ここは作り始める前に決めないと後から面倒になるところです。LINEのユーザーIDは、プロバイダー(チャネルをまとめる単位)ごとに発行されます。 同じプロバイダーの下にあるMessaging APIチャネル(LINE公式アカウント)とLINEログインチャネル(LIFF)では、同じ人に同じユーザーIDが付きます。
つまり、LIFFで操作している人と、友だちリストの中のその人を結びつけたいなら、両方を同じプロバイダーの下に置く必要があります。 別のプロバイダーに作ってしまうと、同じ人でも別のIDになり、結びつきません。
もう1つ。画面(ブラウザ側)から送られてきたユーザーIDを、そのまま信用してはいけません。 公式ドキュメントでも、サーバー側でアクセストークンまたはIDトークンを検証する形が案内されています。ここは開発側の責任範囲ですが、発注する側も「そういう工程がある」ことは知っておいてください。 見積もりに入っているかどうかの確認になります。
LIFFで何が増えるか
1章の3段階の表を、LIFFの列だけ詳しく開くと次のようになります。
| できるようになること | 具体的に何が起きるか |
|---|---|
| 友だちの識別 | 開いた人が誰か分かるので、名前や氏名を聞かずに済む。申込内容をその友だちのタグ・情報に書き戻せる |
| 今の値を見せる | 空き状況・在庫・残数・ポイントのように、開くたびに変わるものを出せる |
| その人だけの内容を見せる | 過去の履歴・書類・契約内容・会員証 |
| 複数画面のやり取り | 入力→確認→完了、条件で分岐する申込、絞り込みながら選ぶ予約 |
| 社内システムとの往復 | 情報を取りに行く/書き込む。kintoneや既存システムに申込がそのまま入る |
| 完了をLINEに残す | 完了通知やリマインドをメッセージで送り、トークに履歴が残る |
外部の予約サイトに飛ばす場合との差は、8章で見たとおりです。ブラウザに出ない、氏名を打ち直さない、誰が申し込んだか分かる、その後の配信を変えられる。この4つが、LIFFにする実質的な理由です。
LIFFとLINEミニアプリの違い
混同されやすいので、決めるために必要な範囲で整理します。
| LIFF | LINEミニアプリ | |
|---|---|---|
| 位置づけ | 自社のLINE公式アカウントの中で動く画面 | 審査を通してLINEアプリ内の枠に載せるもの |
| 公開までの手続き | 自社でチャネルに登録して公開できる | 審査が必要。要件と手間が変わる |
| 主な導線 | リッチメニュー・配信・トークのリンク | 上記に加え、LINEアプリ側からの導線がある |
| 向いているもの | まず効果を確かめたいとき | 広く、継続的に使われる前提のサービス |
多くの場合、まずLIFFで作って効果を確かめる順番をおすすめしています。 作ったものが使われるかどうかは、出す前には分かりません。審査の要件は変わることがあるので、LINE Developers のドキュメントで最新の条件を確認してください。
点検リストの10番は「ミニアプリにするかを判断した」です。判断すればよく、ミニアプリにする必要はありません。 判断していない状態で進むことだけを止めています。
標準で足りなくなる5つの兆候
8章の結論をここに持ってきます。1つも当てはまらないなら、この章を読み終えた後、8章に戻ってください。
| # | 兆候 | 標準フォームで止まる理由 |
|---|---|---|
| 1 | 入力した内容によって、次に出す画面を変えたい | 分岐した先の画面そのものを作れない |
| 2 | 空き状況・在庫・残数を見せたい | 外部の最新情報を画面に出せない |
| 3 | その人の過去の履歴・書類を見せたい | 個人ごとの内容を呼び出して表示できない |
| 4 | 会員証・ポイントのように、開くたびに変わるものを出したい | 静的な画像しか置けない |
| 5 | 社内システムの情報をその場で確認させたい | 外部システムと対話できない |
要件は「3つの数」で決まる
見積もりが動く要因は、機能の名前ではありません。次の3つの数です。発注する前に、この3つを紙に書いてください。書けていれば、相談は30分で終わります。
① 画面の数
1画面で終わるか、3画面か、5画面以上か。 費用はここに最も強く比例します。
| 画面の数 | 中身の例 |
|---|---|
| 1画面 | 会員証の表示、ポイントの確認、今日の空き枠の一覧 |
| 2〜3画面 | 入力 → 確認 → 完了。条件で選択肢が変わる申込 |
| 5画面以上 | マイページ(履歴・書類・変更・キャンセル・設定) |
最初から5画面を作らないでください。 1画面か、多くて3画面で出して、使われている場所を見てから足す。これが、作り直しの費用を最も減らす進め方です。
② 扱うデータ
| 種類 | 何をするか | 難しさの目安 |
|---|---|---|
| 入力して終わる | 受け取って保存するだけ | 低い(ただし、これだけなら標準フォームで足りる可能性が高い) |
| 読んで見せる | 空き状況・履歴・在庫を表示する | 中。見せる元のデータが存在しているかが前提 |
| 書き戻す | 予約を確定する、在庫を減らす、タグを付ける | 高い。二重登録や競合の考慮が必要 |
「読んで見せる」で見落とされるのが、元のデータが今どこにあるかです。担当者の頭の中や紙の台帳にしかないなら、LIFFの前にそのデータを置く場所を作る話(10章)が先に来ます。
③ つなぐ先
0件・1件・2件以上。 つなぐ先が増えるほど、費用も、壊れたときの調査も増えます。
つなぐ先ごとに、次の2つを書いてください。
- 取りに行く情報(空き枠、会員情報、履歴)
- 書き込む情報(予約、申込、ステータスの変更)
つなぐ先に外から出入りする口(API等)があるかは、必ず先に確認してください。口が無いシステムには、つなげません。ここが×だと、要件そのものが成立しません。
作る前に決める4つ
1. 個人情報の持ち方
| 決めること | 基本の形 |
|---|---|
| 何を持つか | 必要最小限。LINEの友だち識別子と、氏名・連絡先は分けて持つ |
| どこに置くか | 正本は業務システム側(kintone等)。LIFF側は表示のために呼び出すだけ、が望ましい |
| いつまで置くか | 保存期間と、削除の手順・担当を決める |
「とりあえず全部保存しておく」は、作るときは楽ですが、後で最も高く付きます。 持った情報は、守る責任と、消す手間と、聞かれたときに答える義務が付いてきます。
2. 失敗したときの動き
これを決めていない見積もりは、安く見えているだけです。必ず起きるのは、次の3つです。
| 失敗 | 決めておく表示・動き |
|---|---|
| つなぎ先のシステムが落ちている | 「ただいま確認できません。お電話でご予約ください」+電話番号。白い画面で止めない |
| 通信が切れた・途中で閉じた | 入力の途中が消えるのか、残るのか。送信が二重になったらどうするか |
| 同じ枠に同時に申し込まれた | 先着をどう決めるか。後の人に何を見せるか |
3つ目は、空き枠を見せる予約では必ず起きます。「起きない前提」で作ると、必ずトラブルの電話が来ます。
3. 公開後に誰が直すか
LIFFは作ったら終わりではありません。文言、項目、選択肢は必ず変わります。
- 文言や選択肢のように、直しやすいところは管理画面から変えられるようにする(当社はこの形にします)
- コードの変更が必要な部分は誰がやるかを決める。自社で引き継ぐなら、ソースと手順を受け取る
「直せない画面」は、半年で使われなくなります。 内容が古くなった瞬間に、誰も開かなくなるからです。
4. サーバー費用を誰が払うか
LIFFは自社のWebページなので、動かし続けるための費用が毎月かかります(規模によります)。誰の予算から出るのかを、作る前に決めてください。構築費だけで稟議を通して、運用費が出てこないのが最も多い詰まり方です。
費用の考え方
当社の場合は次のとおりです(/services/liff)。
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 初回相談(30分) | 無料 |
| 要件の整理(画面の数・必要なデータ・つなぐ先を決める) | 無料 |
| LIFF開発 | お見積り |
| 運用・改善 | お見積り |
要件の整理まで無料にしているのは、ここで「作らなくてよい」と分かることが多いからです。 相談の30分で、LIFFが要るかどうかから判断します。8章で標準機能に戻る結論になっても、それが正しい結論です。
お見積りは、画面の数・つなぐ先の有無・認証の要否で変わります。LINE公式アカウントやLステップ・エルメの月額料金は御社のご契約で、当社の見積もりには含みません。サーバー費用が必要な場合は別途お伝えします。
見積もりを比べるときは、次の3つが入っているかを見てください。 入っていない見積もりは安く見えます。
- 失敗したときの動き(つなぎ先が落ちたとき・二重送信・同時申込)
- 公開後に自社で直せる範囲(管理画面から変えられるのはどこまでか)
- サーバー費用と、その負担の所在
LIFFにしないほうがよい場合
この章で最も大事な節です。 次のどれかに当たるなら、作らないでください。
| # | 当てはまる状況 | 代わりにすること |
|---|---|---|
| 1 | 8章の5つの兆候が1つも当たらない | 標準のフォームで受ける。作らない |
| 2 | 出口がまだ1つに決まっていない/出口の件数を数えていない | 2章と11章に戻る。何を増やすのかが決まっていない状態で画面を作らない |
| 3 | 外部の予約サイトに飛ばしているが、離脱を測っていない | 8章の測り方でタップ数と完了数を1ヶ月並べる。問題が実在するか確かめてから |
| 4 | つなぎたいシステムに、外から出入りする口が無い | 先に業務システム側を整える(10章)。LIFFだけ作っても情報が取れない |
| 5 | 公開後に直す人がいない(予算も担当も無い) | 作らない。半年で使われなくなり、サーバー費用だけが残る |
| 6 | 個人情報の保存場所・保存期間・削除の手順を決められない | 決まるまで作らない。預かる責任だけが先に発生する |
| 7 | 一度きりのキャンペーンで、終われば使わない | 標準フォームか外部サービス。作る費用とサーバーが後に残る |
さらに、そもそもLIFFという選択自体が合っていない場合が3つあります。
- LINEを使っていない人にも同じことをさせたい。 LIFFはLINEの中で開くものです。全員に届けたいなら、普通のWebサイトで作って、LINEからはそこへ案内するほうが正しい形です
- 長い入力、長い文章、PCでの作業が中心。 スマホのLINEの中で開く画面です。何十項目もの申請や、じっくり読む資料には向きません
- 決済や本人確認が主役。 その場合の主題は決済事業者との契約と審査であって、LIFFは入口にすぎません。順番を間違えると、画面だけ先にできます
当社はLIFFを作る会社ですが、上のどれかに当たるお客様には作りません。 作って使われなかったものは、こちらの実績にもなりません。
よくある誤解を3つだけ
「LIFFを作れば離脱がなくなる」 ——減るのは、ブラウザに飛ぶこと・ログインを求められること・氏名を打ち直すことが原因の離脱だけです。そもそも申し込む理由がない、価格が合わない、空き枠が希望と違う、という離脱は画面では解決しません。離脱の中身を先に見てください。 8章のタップ数と完了数を並べただけでは、どこで止まっているかまでは分かりません。分からないなら、まず外部サイトのまま原因を1つ特定するほうが早いです。
「LIFFにすれば、Lステップやエルメは要らなくなる」 ——別の道具です。LIFFは画面を作る仕組みで、配信の設計・タグ・ステップ配信・セグメントはツール側の役割です。当社も併用を前提に設計します。LIFFで受けた内容をタグや友だち情報に書き戻し、その後の配信をツール側で変える、という形が最も素直です。
「まず小さく作って、後から全部つなげばいい」 ——小さく作るのは正しいですが、つなぐ先だけは最初に決めてください。 画面を先に作ってから「やっぱり基幹ともつなぎたい」となると、データの持ち方から作り直しになります。画面は減らしてよく、つなぐ先は減らさない。 これが費用を抑える正しい縮め方です。
この章の出口
この章を終えたとき、手元に残っているべきものは次の3つです。
- 3つの数(画面の数・扱うデータの種類・つなぐ先の件数)が紙に書いてある
- 点検リスト10項目が、すべて○(1つでも空なら、そこを埋めるまで着手しない)
- 「作らない」という結論も含めた判断が1行(作らない場合は、7つのどれに当たったか)
この章の成功は、LIFFを作ることではありません。 作るべきものだけを、作るべき大きさで作り始められる状態になっていることです。 点検リストの3番(つなぐ先)が埋まらなかった人が最も多いはずです。その場合、足りていないのはLIFFではなく、つなぐ相手側の整備です。次の章で扱います。
初回相談と要件の整理は無料です。10項目のうち埋まらないところがある状態でも構いません。LIFF開発からご相談ください。要らないと判断した場合は、その理由をお伝えします。
この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)
点検リスト:LIFF着手前チェック(10項目)
合格ライン=10項目すべて。1つでも空欄なら、まだ作り始めません。
| # | チェック項目 | ○の条件(合格の状態) |
|---|---|---|
| 1 | 標準フォームで足りない理由が、5つの兆候のどれかで言える | 該当する番号を言える |
| 2 | 画面の数が決まっている | 数と、各画面に何を出すかが書いてある |
| 3 | つなぐ先が決まっている | システム名と、取りに行く情報・書き込む情報が書いてある。外から出入りする口があることを確認済み |
| 4 | 友だちの識別が要るかを決めた | 要る/要らないが決まっている(要るなら、同じプロバイダーの下に置くことを確認済み) |
| 5 | 保存する個人情報と保存場所・保存期間を決めた | 3つとも書いてある |
| 6 | 失敗したときの動きを決めた | つなぎ先が落ちたとき・通信が切れたとき・同時に申し込まれたときの表示が決まっている |
| 7 | 公開後に誰が直すかを決めた | 文言・項目の変更を誰がやるかが書いてある |
| 8 | サーバー費用の負担が決まっている | 誰が払うかが書いてある |
| 9 | LIFFで完結させる範囲と、外に出す範囲の線が引いてある | どこまでLINEの中で終わるかが書いてある |
| 10 | LINEミニアプリにするかを判断した | まずLIFFで出すことを決めた(またはミニアプリにする理由が書いてある) |
なぜ全項目必須なのか。 他の章の点検リストは、×があっても運用しながら直せます。LIFFは違います。設定(4番のプロバイダー)、扱う情報の設計(5番)、失敗時の動き(6番)は、後から変えると作り直しになります。 作ってから直す費用のほうが、先に決める手間より確実に高く付きます。12章のツール移行を「12項目すべて」にしているのと同じ理由です。
更新日 2018年10月20日
