株式会社COTSUBU

CHAPTER 05

GTMの設定|タグ・トリガー・変数の分け方

この章で分かること

  • GTMを使うべき場合と、使わなくてよい場合(作らない判断)
  • タグ・トリガー・変数の命名規則(当社の決めごとと、その理由)
  • 実装側に渡す1枚(データレイヤーの仕様)の書き方と、公開の作法
この章の目次(10)
  1. 1GTMは「計測をサイトから切り離す」道具
  2. 2部品は3つしかない
  3. 3命名の決めごと(当社の決めごと)
  4. 4データレイヤーを先に決める(実装側に渡す1枚)
  5. 5何をGTMで取り、何をサイト側に頼むか
  6. 6公開の作法(いつでも戻せる状態を保つ)
  7. 7権限と名義
  8. 8GTMでやってはいけないこと
  9. 9よくある間違いを5つ
  10. 10この章の出口

GTM(タグ管理ツール)は、計測用のコードを、サイトのファイルを触らずに足したり外したりできる道具です。 便利な反面、設計なしに使うと中身が誰にも分からない箱になります。担当者が替わった瞬間、何が動いているか分からず、消すことも直すこともできなくなります。 この章は、部品の分け方と命名を決め、実装側に渡す1枚(データレイヤーの仕様)を作り、いつでも元に戻せる公開の作法を決めるための章です。

この章で分かること

  • GTMを使うべき場合と、使わなくてよい場合(作らない判断)
  • タグ・トリガー・変数の命名規則(当社の決めごとと、その理由)
  • 実装側に渡す1枚(データレイヤーの仕様)の書き方と、公開の作法

GTMは「計測をサイトから切り離す」道具

計測のコードをページに直接書くと、変更のたびに制作会社への依頼が発生します。GTMは、コードを外から差し込めるようにする仕組みです。

この「切り離せる」という性質が、GTMの価値のほぼすべてです。計測は、決めたとおりに一度作って終わり、にはなりません。広告を始めれば媒体のタグが増え、フォームを増やせばイベントが増え、やめた施策のタグは消す必要があります。1年のうちに何度も触ることになるのが計測です。そのたびに制作会社に依頼を出し、見積を待ち、改修の順番待ちに並ぶと、計測は常に実態から数か月遅れます。遅れている計測の数字で判断することになるので、判断そのものが鈍ります。

もうひとつの理由は、一覧できることです。ページに直接書いたコードは、ソースを開いて探さないと見つかりません。探すのは制作会社の作業になるので、自社では「いま何が動いているか」を把握できません。11章で扱う同意やプライバシーの話が、ほとんどの会社で行き詰まるのはここです。把握していないものについては、決めることも、相談することもできません。

ただし、この2つの利点はどちらも「中を見る人がいる」ことを前提にしています。前提が崩れると、GTMは利点をひとつも出さずに、管理対象だけを1つ増やします。だから、この章で最初に決めるのは設定ではなく、入れるかどうかです。

GTMを使うと GTMが無いと
計測の追加・削除が、サイトの改修と切り離せる 計測を1つ足すたびに制作会社へ依頼が要る
何が動いているかを一覧できる ページのソースを読まないと分からない
公開前に試せる/元に戻せる 本番で直すことになる
複数のツールのコードを1か所で管理できる ページに複数のコードが散らばる

使わなくてよい場合

次のどれかに当てはまるなら、GTMを入れないほうが簡単です。

条件 理由
計測がページの表示だけで足りる 直接タグを入れるほうが速く、壊れにくい
サイトの作りが、完了ページを分けられる形になっている Aの取り方(4章)だけで足りることがある
サイトを触れる人がすぐ動ける(社内に制作担当がいる) 中間の仕組みを増やす価値が小さい
誰も中を見ない(導入後に担当者を置けない) 箱だけが残る。最も悪い形

最後の行が本当の判断基準です。 GTMは、中を管理する人がいて初めて役に立ちます。「あとで誰かが見るだろう」で入れると、3年後に消せないタグの山が残ります。

この表は、上3行と最後の1行で読み方が違います。上3行は「無くても足りる」という話なので、当てはまっても後から入れられます。最後の1行は「入れると悪化する」という話なので、当てはまるなら入れてはいけません。上3行が全部当てはまっても、担当者がいてタグを増やす予定があるなら入れて構いませんし、上3行が1つも当てはまらなくても、担当者がいないなら入れない判断が正解です。

よくあるのは、こういう状態です。代理店や制作会社を何社か経由した結果、GTMの中にタグが何十本も並んでいる。名前は「タグ1」「新しいタグのコピー」「GA4設定_修正版」といった調子で、どれが生きているのか社内の誰にも分からない。消したいが、消して何が止まるか分からないので消せない。結局、全部残したまま新しいタグを足し続けるしかない。ここに至ると、一覧を作り直す作業だけで数日かかります。

こうなる原因は、タグの本数ではありません。入れた時点で管理する人を決めないことです。どのタグにも「誰が・何のために入れたか」が記録されていれば、そこから芋づる式にたどれます。逆に言えば、この章の残りは、その記録を残し続けるための決めごとにすぎません。

部品は3つしかない

GTMを難しく感じるのは、用語が増えるからです。実際は3つです。

部品 役割 言い換えると
タグ 何を送るか 「GA4に form_submit を送る」
トリガー いつ送るか 「/contact/thanks が表示されたとき」
変数 何を一緒に渡すか 「フォームの種類(form_id)」

タグは1つ、トリガーは複数、変数はタグとトリガーの両方から使われます。 この関係さえ分かれば、あとは名前の付け方の問題です。

命名の決めごと(当社の決めごと)

GTMには命名規則がありません。だから自分で決めます。 決めない場合に起きるのは、「タグ1」「新しいタグ(コピー)」「GA4設定_修正版_最新」が並ぶ状態です。

当社は次の形にしています。一覧が名前順で並んだときに、種類ごとに固まるようにするのが狙いです。

部品 形 例
タグ <送り先> - <イベント名> - <補足> GA4 - form_submit - 問い合わせ
トリガー <種類> - <条件> ページ表示 - /contact/thanks / クリック - telリンク
変数 <出どころ> - <名前> DL - form_id / 定数 - 測定ID
フォルダ <用途> GA4 / 広告 / 検証中

補足の欄に日本語を入れてよいのは、GTMの中だけです。 GA4に送るイベント名は3章の命名規則(小文字・_区切り・日本語なし)に従います。GTM上の表示名と、送るイベント名を混同しないでください。

決めごと 理由
送り先を先頭に書く 「GA4に送るものだけ見たい」が一覧でできる
コピーしたタグの (コピー) を残さない 何が本番か分からなくなる
「検証中」はフォルダで分ける 消し忘れを見つけやすい
使っていないタグは消す(止めるだけにしない) 止めたものが積み上がると、誰も消せなくなる
名前に日付を入れない 直すたびに古い日付が残る。履歴はバージョンで見る

データレイヤーを先に決める(実装側に渡す1枚)

GTMは、サイト側が渡してくれた情報しか使えません。 「フォームの種類」「注文金額」「会員か非会員か」といった情報は、サイト側が データレイヤーという受け渡しの場所に入れてくれて初めて、計測で使えます。

この受け渡しの仕様を、先に1枚にして実装側へ渡すのが、この章の最大の成果物です。

順番が大事です。サイトができてから「フォームの種類も分けたい」と言うと、実装のやり直しになり、追加の見積が出ます。作る前にこの1枚を渡していれば、同じ内容が見積の中に最初から入ります。費用の差は、作業量の差ではなく、頼んだ時期の差です。当社が制作の要件を出す場面で、この表だけは設計の初日に渡しているのは、そのためです。

もうひとつ、渡す側の効き目もあります。この表を埋めようとすると、「結局うちは何を分けて見たいのか」を先に決めることになります。決められないまま作ると、後から「業種別に見たい」「初回か再訪かで分けたい」が次々に出てきます。1章で1件の定義を決め、4章で取り方を決めているのは、この表を埋められる状態にするためでもあります。

項目名 型 いつ入るか 入れる人 使い道
event 文字 送信が完了したとき(form_submit) サイト側 トリガーの条件
form_id 文字 同上(contact/recruit/download) サイト側 出口ごとの内訳
submission_id 文字 同上(送信ごとに変わる値) サイト側 重複の排除(4章)
value 数値 金額が確定する場合のみ サイト側 1件の重み(4章)

「サイト側が入れる」と書いた欄は、制作会社の作業です。 ここを口頭で頼むと、名前の表記が揺れ、動かなくなります。表の形で渡してください。 表を渡すだけで、認識違いの大半が消えます。

個人情報(氏名・メールアドレス・電話番号)は、この表に入れません。 各ツールの利用規約で、個人を特定できる情報の送信は禁止されています(最新は各ツールの利用規約で確認してください)。詳しくは11章で扱います。

何をGTMで取り、何をサイト側に頼むか

境界線を決めておくと、見積の話が早く終わります。

取りたいもの GTMだけでできるか 備考
ページの表示 できる —
特定のリンク・ボタンのクリック できる ボタンに目印(id・class)が要ることがある
電話リンク(tel:)のクリック できる 6章
外部リンク・ファイルのダウンロード できる 拡張の計測でも取れる(3章)
フォームの送信の成立 できないことが多い サイト側にデータレイヤーへの書き込みを頼む
完了ページの表示 できる 完了ページを作ってもらう必要がある
会員/非会員、注文金額 できない サイト側が渡す

この表は、見積を取る前に一度目を通してください。使い方は単純で、「できる」と書いてある行は自社の作業、「できない」「できないことが多い」の行は制作会社への依頼、と読み分けます。依頼側の行だけを抜き出して渡せば、それがそのまま発注の範囲になります。範囲が曖昧なまま「計測できるようにしてください」と頼むと、どこまでが見積に入っているかが双方で食い違い、公開後に「そこは含まれていません」になります。

境界で迷ったときは、サイト側に頼む方向へ倒してください。GTMの側で無理に取ろうとすると、ボタンの見た目や文言に依存した設定になります。その設定は、サイトのデザインをひとつ変えただけで静かに壊れます。壊れても警告は出ないので、数か月後に数字が減っていることで気づくことになります。サイト側に1行足してもらう手間のほうが、はるかに安上がりです。

「ボタンのクリック」と「送信の成立」は別物です(4章)。クリックだけを数えると、エラーで止まった人も1件に数えます。

公開の作法(いつでも戻せる状態を保つ)

GTMの事故は、公開の手順を決めていないときに起きます。 次の5つだけ守ってください。

# やること 理由
1 プレビュー(検証モード)で、実際に動かして確かめる 公開してから直すと、その間の数字が壊れる
2 公開時のバージョン名に日付と変更内容を書く 「何を変えたか」を後から追える
3 公開できる人を2名以内にする 静かに壊れる原因の多くは、権限の広さ
4 公開したら、本番で1件送って確かめる プレビューで動いても本番で動かないことがある
5 変更を12章の履歴に1行書く 数字の段差と照合できる

GTMには過去のバージョンに戻す機能があります。 ただし、戻したことに気づかれないのが厄介です。戻した場合も、必ず履歴に1行書いてください。

公開の取り消しは、計測が止まる典型的な原因です(2章・工程5の「ある月からゼロが続く」)。

権限と名義

項目 合格の状態 ×のときに起きること
アカウントの名義 自社の管理アカウント 委託先の契約終了日に、中身ごと触れなくなる
委託先の扱い ユーザーとして追加する 名義を渡すと、取り返すのに交渉が要る
編集と公開の分離 編集はできるが公開はできない権限を使う 誰でも公開できる状態は、事故が起きても誰の操作か分からない
退任・契約終了時 その日に権限を外す 外し忘れが何年も残る

名義が委託先になっている場合、直すのは早いほどよいです。 移管の手順は12章で扱います。

GTMでやってはいけないこと

やってはいけないこと 理由
見た目やテキストを書き換える サイトの本体とGTMで、表示の正解が2つになる。誰も原因を追えなくなる
出どころの分からないタグを貼る 何を外部に送っているか分からない。同意の管理もできない(11章)
個人情報をパラメータやURLに載せる 各ツールの利用規約で禁止されている。送ってしまうと後から消すのが大変
重い処理を入れる 表示速度が落ちる。サイト側の改善を打ち消す
検証用のタグを本番に残す 数字が二重になる。「検証中」フォルダで管理する

2行目は、代理店から渡されたタグをそのまま入れるときに起きます。 何をするタグか、どこに送るタグかを1行で説明してもらってから入れてください。説明できないタグは入れません。

よくある間違いを5つ

「GTMを入れたが、中に何が入っているか誰も知らない」 ——導入だけして管理者を置かなかった状態です。消せないタグが積み上がります。直し方:タグの一覧を出し、1本ずつ「何のために・誰が・いつ入れたか」を埋める。埋まらないものは、止めて1か月様子を見てから消す。

「タグ名が『GA4設定_修正版_最新』になっている」 ——どれが本番か分かりません。直し方:命名規則を決め、一斉に付け替える。付け替えは表示名の変更なので、計測は止まりません。

「プレビューで動いたので公開した(本番では確かめていない)」 ——プレビューと本番で条件が違うことがあります。同意の設定が絡むと特に違います(11章)。直し方:公開後に本番で1件送る。これを公開手順の最後の行に書いておく。

「フォームの送信をクリックで取っている」 ——エラーで止まった人も1件に数えます。実力より多く見えます。直し方:完了ページの表示に変える。変えられないなら、サイト側にデータレイヤーへの書き込みを頼む。

「制作会社のアカウントの下にGTMが作られている」 ——契約が終わった日に、計測ごと失います。直し方:自社名義のアカウントを作り、コンテナを移す。移管のときにタグを作り直す必要はありません。

この章の出口

手元に残っているべきものは3つです。

  1. タグの一覧(1本ずつ、用途・入れた人・入れた日が埋まっている)
  2. データレイヤーの仕様1枚(実装側に渡した/渡す表)
  3. 公開の手順(5行。最後の行が「本番で1件送る」)

実装の土台ができました。次は、Webの中で完結しない問い合わせです。電話・LINE・紙。ここを数えられていない会社は、自社の実力を半分しか見ていません。

次の章へ:6章 フォーム・電話・LINEの計測設定

この章の点検リストを開く(自社の状態を○×で判定する用)

点検リスト:GTMの設計(12項目)

# チェック項目 合格ライン
1 GTMを使う理由が言える 「計測を足す予定がある」「中を見る担当がいる」が両方○
2 アカウントの名義が自社 委託先の名義になっていない
3 公開できる人が2名以内 一覧を出せる。退職者・契約終了先が残っていない
4 命名規則が紙に書いてある タグ・トリガー・変数の形が決まっている
5 タグの一覧に、用途不明のものが無い 全タグについて「何のために・誰が・いつ」が埋まっている
6 使っていないタグを消している 「止めているだけ」のタグが積み上がっていない
7 データレイヤーの仕様が1枚にある 項目名・型・いつ入るか・入れる人が表になっている
8 個人情報を送っていない 氏名・メール・電話が、パラメータやURLに入っていない
9 公開バージョン名に日付と変更内容がある 直近5件を見て、何を変えたか分かる
10 公開後に本番で実測している 直近の公開について、実測の記録がある
11 検証用のタグが本番に残っていない 「検証中」フォルダが空、または明示されている
12 見た目を書き換えるタグが無い 計測以外の処理が入っていない

合格ライン=12項目中9以上。ただし 2・5・8 のどれかが×なら、点数に関係なく先に直します。

  • 2が×:契約が終わった日に、計測を失います。復旧できません
  • 5が×:何が動いているか分からない状態です。止めることも直すこともできません
  • 8が×:規約違反になり得ます。送ってしまったデータを後から消すのは、送らないより何倍も大変です

5は、一覧を出して埋めるだけの作業です。 1〜2時間で終わります。

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更新日 2018年10月20日