株式会社COTSUBU
AI活用

AI×カスタマーサポート|小規模企業の導入ガイド

宇田川 将也|8分
AIカスタマーサポートチャットボットFAQ顧客対応

小規模企業が問い合わせ対応にAIを入れるとき、最初に作るのはチャットボットではありません。AIが答えの根拠にする「回答の元」(FAQ)です。

回答の元が無いまま自動応答を置くと、AIは答えを知らない質問にも、それらしい文章で答えます。間違った営業時間、ありもしない割引、できない対応の約束が、顧客に直接届きます。

この記事では、問い合わせを分けて、答えを決め、段階を踏んでAIに渡す手順をまとめます。

まず直近の問い合わせを分ける

道具を選ぶ前に、直近1〜3か月の問い合わせを書き出し、次の4つに分けます。件数は自社で数えてください。

種類 例 AIに答えさせてよいか
答えが決まっている 営業時間、場所、駐車場、支払方法、持ち物 よい。FAQに載せる
確認すれば答えられる 空き状況、在庫、納期 仕組みとつながっていれば一部。つながっていなければ人
判断が要る 値引き、例外対応、返金、クレーム 答えさせない。 人に渡す
安全・健康・契約に関わる アレルギー、症状、契約内容の解釈 答えさせない。 人が返す

1行目の件数が、AIで減らせる範囲の上限です。ここが少ないなら、チャットボットより先に、Webサイトの案内文を直すほうが効きます(→ 問い合わせが来ないときに最初に見る5つ)。

3つの段階

段階 やり方 人の役割
1. 人が返す+AIが下書き 受けた問い合わせとFAQを対話型AIに渡し、返信の下書きを作らせる 下書きを確認して送る
2. FAQの範囲だけ自動応答 Webサイトやチャットに自動応答を置く。FAQに無い質問は人に渡す 渡された質問に答え、FAQに足す
3. 操作まで自動 予約の変更や注文状況の確認など、システムを動かす対応をAIに任せる 例外処理、誤操作の取り消し

小規模企業は段階1から始めてください。 段階1は顧客に直接AIの文章が届かないので、間違いを社内で止められます。1か月回すと、どの質問でAIが間違えるかが分かり、FAQの穴が埋まります。その後で段階2に進みます。

段階3は、予約や注文のシステムが先に整っていることが前提です。操作を誤ったときに取り消せる仕組みが無いなら、進まないでください。

回答の元(FAQ)を作る手順

  1. 上で「答えが決まっている」に分けた問い合わせを、質問ごとにまとめる
  2. 過去に実際に返した文面を集める(メール・チャットの履歴)
  3. AIに、質問と回答の候補を整理させる(下の指示の型)
  4. 回答の中身を人が1問ずつ確認する。 答えが決まっていないものは、ここで社内で決める
  5. FAQに載せる。更新日と担当者を書く

指示の型(FAQの整理):

以下は当社が過去に受けた問い合わせと、実際に返した文面です。
よくある質問と回答の一覧に整理してください。
・同じ意味の質問は1つにまとめ、元の質問の言い回しも残す
・回答は、実際に返した文面に書かれている事実だけで作る
・返した文面によって答えが違う質問は「回答が統一されていない」と書く
・返した文面が無い質問は「回答未定」と書く

「回答が統一されていない」が出てきたら、それが社内で決めていなかった答えです。AIに決めさせず、人が決めてください。

段階1:返信の下書き

指示の型(問い合わせへの返信の下書き):

以下のFAQだけを根拠に、問い合わせへの返信を下書きしてください。
・FAQに載っていないことは答えず、「担当者に確認のうえご連絡します」と書く
・料金・返金・契約・健康や安全に関わる質問には答えず、同じく担当者に回す
・営業時間や金額は、FAQの表記をそのまま使う
【FAQ】(ここに貼る)
【問い合わせ】(ここに貼る)

1行目が最も重要です。これが無いと、FAQの外の質問に一般論で答えます。

道具を選ぶ4つの問い

チャットボットや自動応答の道具は、製品によって機能も料金も違い、変わります。料金と機能の最新は各社の公式サイトで確認してください(2026年9月確認)。 選ぶときは、製品名ではなく次の4つを聞きます。

問い なぜ聞くか
回答の元(FAQ)を、自社の担当者が自分で更新できるか 更新に外注が要ると、古い答えが残り続ける
FAQに無い質問を、人に渡せるか(通知・引き継ぎ) 渡せないと、AIが作り話で答えるか、顧客が行き止まりになる
やり取りの記録を見られるか 「何をよく聞かれているか」が次のFAQの材料になる
入力された内容の保存期間と、学習への利用 顧客の情報を預かる以上、提供元の公式ドキュメントで確認が要る

2つ目が「いいえ」の道具は、小規模企業には向きません。人に渡せない自動応答は、答えられない質問を顧客に押し返すだけです。

LINE公式アカウントで問い合わせを受けている場合は、自動応答とチャットの境目の引き方が別にあります(→ 教科書 LINE 7章 チャット・自動応答の使い分け)。

個人情報の扱い

チャットやフォームで名前・連絡先・注文内容を受け取るなら、扱いは自社で確認してください。この記事では判断しません。

確認したいこと 確認先 確認するときの問い
受け取った情報を道具に入れてよいか 顧問弁護士、個人情報保護委員会の相談窓口 「この使い方は、プライバシーポリシーに書いた利用目的の範囲に入るか」
入力内容の扱い 提供元の公式ドキュメント 「入力内容は学習に使われるか」「保存期間は」「管理者は記録を消せるか」

→ 入れてよい情報の線引きは教科書 3章 生成AIの社内ルール、起きると取り消せないことは教科書 10章 生成AIでやってはいけないことにまとめています。

当社でのやり方

当社(株式会社COTSUBU)は、AIに「洗い出し」をさせ、「決める」のは人にしています。たとえば、このサイトの記事94本をAIで全件点検したとき(2026-09-12)、出典のない数字やリンク切れを洗い出したのはAIですが、直すかどうかは人が1件ずつ決めました。問い合わせ対応でも同じで、AIが整理したFAQの候補のうち、どの答えを載せるかは人が決めます。

受託では、OpenAI の API を使って、業務ヒアリングの入力をAIが補助するデモアプリも作っています。顧客に直接答えさせる前に、社内の人の入力や下書きを補助する形から始めるのが、間違いを外に出さない順番です。

問い合わせの記録を個人のメールやチャットに散らさず、1か所に集める段階では、kintone のような自分で作れる道具が使えます。

失敗例と、人が確かめる場所

失敗 起きること 人が確かめる場所
FAQを作らずに自動応答を置く 答えを知らない質問に作り話で答える 回答の元を先に作る
FAQに無い質問の行き先が無い 顧客が行き止まりになり、電話に戻る 人に渡す通知が届いているか
FAQを更新しない 変わった営業時間や料金を答え続ける FAQの更新日。変更のたびに直す
判断が要る質問も自動で答えさせる 返金や例外の約束が顧客に届く 料金・返金・契約・安全は人が返す
やり取りの記録を見ない 同じ取りこぼしが続く 週1回、人に渡された質問を見てFAQに足す

効果の測り方

減った件数は、自社の記録で出します。

  1. 導入前の1か月、問い合わせを上の4種類に分けて件数を記録する
  2. 段階1のあいだ、1件の返信にかかった時間(確認を含む)を記録する
  3. 段階2に進んだら、人に渡された件数と、FAQで完結した件数を分けて数える
  4. 人が対応した件数と時間を、導入前と比べる

→ 効果の測り方は教科書 11章 AI導入の効果測定、どの業務から始めるかは教科書 2章 生成AIの業務活用|どの作業から始めるか。

まとめ

  • 最初に作るのはチャットボットではなく、回答の元(FAQ)
  • 問い合わせを4種類に分け、「答えが決まっている」ものだけをAIに渡す
  • 小規模企業は「人が返す+AIが下書き」から始める
  • 指示文に「FAQに無いことは答えず、担当者に回す」を入れる
  • 道具は「人に渡せるか」「自分で更新できるか」で選ぶ
  • 個人情報の扱いは、確認先と問いを決めて自社で確認する

問い合わせの記録を集めて回す仕組みづくりは、業務効率化(構築まで無料・利用開始後 月5万円〜・税別)でお手伝いしています。

→ AI活用支援 → AIでメール業務を効率化する方法 → AIで業務自動化|中小企業が今すぐ始められる5つのこと → 中小企業のAI導入セキュリティリスクと対策 → kintoneとは?中小企業のための入門ガイド

よくある質問

チャットボットを置けば問い合わせは減りますか

問い合わせのうち、答えが決まっている質問がどれだけあるかで決まります。答えが決まっていない質問にAIが答えると、作り話になることがあります。まず直近の問い合わせを分類し、答えが決まっている質問の件数を自社で数えてから判断してください。

AIに顧客へ直接回答させても大丈夫ですか

回答の元(FAQ)に載っている質問だけに答えさせ、載っていない質問は「担当者に確認します」と返して人に渡す形なら使えます。料金・返金・契約・健康や安全に関わる質問は、自動で答えさせずに人が返してください。

チャットで個人情報を受け取るときに気をつけることは

判断は自社で確認してください。確認先は顧問弁護士や個人情報保護委員会の相談窓口で、問いは「チャットで受け取る情報は、プライバシーポリシーに書いた利用目的の範囲に入るか」です。あわせて、使う道具が入力内容をどう保存し、学習に使うかを提供元の公式ドキュメントで確認してください。

宇田川 将也/ 代表取締役

2024年に総務省の地域活性化起業人として島根県海士町に着任。役場に住み込んで業務改善に従事し、kintoneで電子決裁や定期健診管理を構築しました。

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