ベーシックインカムと複業の意外な接点
ベーシックインカム(BI)とは、すべての国民に対して最低限の生活費を無条件で支給するという社会制度の構想です。フィンランドやカナダなどで実験的に導入され、日本でも議論が続いています。
一方で、企業レベルでベーシックインカムの発想を取り入れた経営モデルが、一部の先進的な企業で実践され始めています。それが「企業版ベーシックインカム×複業」というモデルです。
このモデルの骨子はシンプルです。
- 会社がメンバーに最低限の固定給を支給する
- メンバーは会社の業務に一定時間コミットする
- 残りの時間は自由に複業(他社の業務委託など)を行える
- 複業の収入は100%本人のもの
この仕組みにより、安定した収入基盤を持ちながら、自律的にキャリアを構築できる環境が実現します。
なぜ「企業版ベーシックインカム」が必要なのか
フリーランスの不安定さ
複業やフリーランスの働き方には大きな自由がある一方で、以下のような不安定さが伴います。
- 収入の不安定性: 案件が途切れれば、翌月の収入はゼロ
- 社会保障の薄さ: 国民健康保険・国民年金は、会社員の社会保険より手薄
- 孤独感: ひとりで働く時間が長く、組織への帰属感が薄い
- 営業の負担: スキルだけでなく、案件獲得のための営業力も求められる
- スキルアップの機会減少: 社内研修やOJTの機会がない
正社員の窮屈さ
逆に正社員として働く場合は、安定はあるものの以下の制約があります。
- 収入の上限: 給与テーブルに縛られ、市場価値以下の報酬になりがち
- 副業禁止: まだ多くの企業が副業を認めていない
- 成長の停滞: 同じ環境に長くいると、新しいスキルを獲得する機会が減る
- 時間の拘束: フルタイムの勤務が前提で、自由な時間設計ができない
企業版ベーシックインカムは、フリーランスの不安定さと正社員の窮屈さの「間」を取る働き方です。
企業版ベーシックインカム×複業モデルの仕組み
収入構造
このモデルにおける収入構造は以下のようになります。
総収入 = 企業版BI(固定給) + 複業収入(変動)
例えば、企業版BIとして月額15万円の固定給を受けながら、複業で月額20〜40万円を稼ぐケースを考えてみましょう。
- 最低保障ライン: 月15万円(企業版BIのみ)
- 通常時: 月35〜55万円(企業版BI + 複業収入)
- 繁忙期: さらに上振れも可能
ポイントは、複業収入がゼロになっても最低限の生活は保障されるということです。この安心感が、次に述べるようなさまざまな好循環を生み出します。
安心が生み出す好循環
企業版ベーシックインカムによって収入の「底」が保障されると、以下のような好循環が生まれます。
1. 挑戦的な案件に取り組める
「来月の家賃を払えるか」という不安がなくなることで、報酬は低いけれど技術的に面白い案件や、社会的意義の高い案件に挑戦できるようになります。フリーランスの場合、生活費のために高単価だけど成長につながらない案件を選ばざるを得ないことがありますが、企業版BIがあればその制約から解放されます。
2. スキルの幅が広がる
挑戦的な案件に取り組むことで、新しいスキルが身につきます。結果として市場価値が上がり、より良い条件の案件にアクセスできるようになるという好循環です。
3. 精神的な安定
収入の不安がないことで、メンタルの安定にもつながります。精神的に余裕がある状態のほうが、クリエイティブな仕事も、コミュニケーションも、パフォーマンスが上がるのは言うまでもありません。
4. 長期的な視点でのキャリア設計
目先の収入に追われないことで、3年後・5年後を見据えたキャリア設計が可能になります。
COTSUBUの企業版ベーシックインカム×複業の実践
株式会社COTSUBUは、この「企業版ベーシックインカム×複業」モデルを創業当初から実践している企業のひとつです。
COTSUBUのモデルの特徴
固定給(企業版BI)の位置づけ
COTSUBUからの固定給は、メンバーの生活の「安全網」として機能しています。この固定給を受ける代わりに、メンバーはCOTSUBUの事業(マーケティング支援、システム開発、CxO支援、自治体DXなど)に一定のコミットメントを行います。
複業の完全自由化
メンバーは、COTSUBUの業務以外の時間を自由に使えます。他社からの業務委託を受けることも、自分のプロダクトを開発することも、学習に充てることも自由です。複業の内容について会社の許可は不要であり、収入も100%本人に帰属します。
相互に成長するエコシステム
このモデルの真価は、メンバーが複業で得た知見がCOTSUBUの事業にも還元される点にあります。メンバーが複業先で最新の技術トレンドや業界動向に触れ、それをCOTSUBUのプロジェクトに持ち帰ることで、少人数の組織でも幅広い知見を蓄積できるのです。
COTSUBUのValueと企業版BIの関係
COTSUBUの3つのValueは、このモデルを支える文化的基盤です。
「一箇所に留まるな」: 企業版BIがあるからこそ、メンバーはリスクを取って新しいフィールドに飛び込めます。固定給という安全網があることで、失敗を恐れず「一箇所に留まらない」行動が可能になります。
「速さと行動量は全てを凌駕する」: 限られたコミットメント時間の中で成果を出すには、スピードが不可欠です。企業版BIモデルでは、ダラダラと長時間働くことより、集中して高速にアウトプットを出すことが求められます。
「まずやります、と言える人」: 企業版BIは「与えられるもの」ではなく、自律的に価値を生み出せる人材が前提のモデルです。指示を待つのではなく、自ら課題を見つけて動ける人材にこそ、この働き方は最大の効果を発揮します。
企業版ベーシックインカム×複業の導入を検討する経営者へ
導入のステップ
ステップ1: 業務の可視化と切り出し
自社の業務をすべて洗い出し、「フルコミットが必要な業務」と「パートタイムのコミットで回せる業務」に分類します。
ステップ2: 固定給の水準を決める
地域の最低生活費を基準に、固定給の水準を設定します。高すぎると企業の負担が増え、低すぎるとメンバーの安心感が損なわれます。メンバーとの対話を通じて適切な水準を探りましょう。
ステップ3: 評価・コミットメントの基準を明確にする
固定給を支払う以上、最低限のコミットメント基準は必要です。ただし、時間ベースではなく成果ベースで設定することが重要です。
ステップ4: 小規模に試行する
まずは1〜2名のメンバーでこのモデルを試行し、運用上の課題を洗い出します。うまくいくことを確認してからスケールさせましょう。
注意すべきリスク
- フリーライダーの発生: 固定給を受けながら、最低限のコミットメントすらしないメンバーが現れるリスク
- 情報セキュリティ: 複業先との情報の区分管理が必要
- チームの一体感: 全員がパートタイムだと、帰属意識が薄くなるリスク
- 労務管理: 業務委託契約と雇用契約の法的な区別を適切に行う必要性
これらのリスクは、採用段階でのカルチャーフィットの確認と、定期的なコミュニケーションで大幅に軽減できます。
企業版ベーシックインカムが拓く未来
このモデルが広がることで、日本の働き方には以下のような変化が起きる可能性があります。
- 「会社 vs フリーランス」の二項対立の解消: 安定と自由を両立する第三の選択肢が一般化する
- 地方での就労機会の拡大: 固定給があれば、地方在住でも安心して複業ベースのキャリアを築ける
- 産業間の人材流動性の向上: 複業を通じて、異業種への転身のハードルが下がる
- イノベーションの促進: 安心感のある環境で挑戦的な仕事に取り組む人が増える
まとめ:安心と挑戦を両立する仕組みが、これからの働き方を変える
企業版ベーシックインカム×複業は、安定した収入基盤を持ちながら、自律的にキャリアを構築するという、これまでになかった働き方を可能にするモデルです。
完全なフリーランスほどのリスクを取る必要はなく、正社員ほどの制約もない。この「ちょうどいい自由」が、多くの人にとって最適な働き方になり得ると考えています。
まずは複業への一歩を踏み出すことから始めてみてください。そして、もしこのモデルに共感するなら、COTSUBUの働き方も選択肢のひとつとして検討してみてください。